趣味の、長期ゆるゆるインタビュー企画です。 


by moriko_2011

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【コマドリスト・泰人さん】【1年目】 コマドリストの生態について聞いてみる(3/3)

森:ギミックは、こんなん撮りたいわ!ってポンっと浮かんでくる感じですか。

泰:うん、そういうのもある。そういうのもあるし、最初っからいいものがぱっと思いつかなくて、これはもしかしたらちょっとおもしろいかもっていう小さなアイデアがあって、それをいじくり倒すというか。これ単体だとつまんないけど、これにこれを足したらおもしろいかもとか、これはこっちと置き換えたらいいかもとか。っていうのをずっと考えてると、そのうち、「あ、これだったらいいかも!たぶんおもしろいわ!」みたいなのが出てくるかな。だから一つのアイデアに対して、たくさん派生するアイデアをばーっと出し続けるね。

森:取捨選択の過程を経ていいアイデアが出てくる。

泰:最初っからすごくいいアイデアが出ちゃう場合もあるっちゃあるけど、それもその前にひたすら考えてる期間があるから思いつくんだと思う。やっぱり考えてないとアイデアは出てこないと思ってて。僕の場合は、考えようと思った瞬間に考えられる。何か別に他のことをしてるときは、アイデアってめったに出ないね。

森:ほーう。それすごいですね!

泰:例えば美術館とか展示とかを観てて、「あ、ちょっと待った、これコマ撮りになんないかな?」って思考モードに入って、しばらく考えてまた元に戻るとか。

森:ああ、そっちでよかったです。私、時間をとって「よし、考えるぞ」って考えはじめるという話かと思いました。

泰:あ、でもそういうときもある。むしろ、そっちが多い。

森:へー!すごい。いつもちゃんとアイデアが出てきます?

泰:思いつかない期間がめちゃくちゃ長い。仕事で期間が決まってるときってけっきょく後のほうになって決め手のアイデアを出すことになるんだけど、それまでに無駄なアイデアを出す期間が僕は要るのよね。考えようと思ってる期間っていうか。あと僕はよく電車のなかでアイデアを出すんだけど。

森:わたしはお風呂です。電車でもけっこう出ますけど、考えようっていう状態よりも、あまり意識しないでいる状態のときにふとアイデアが降りてくることが多いですね。

泰:電車は一番何にもしなくて済むから。だからメモ帳をずっと持ってる。ぽつぽつとアイデアが出てきて、それがいいアイデアになったかどうかはまたわかんないけどね。でもそのときはよし考えよう!って考えてて。考えようと思わないときはツイッター見てたりするし。でも、考えても出ないパターンもあって。僕の場合、実際にあるものを使うことが多いからさ、モノをみてるときに出るアイデアのがいいんだよね。

森:実際にモノを手にしてるから。

泰:そう。コーヒーカップで何かやろうと思ったら、コーヒーカップを手に持ってて、こうなりそうだなとかテーブルとかに置いたときに、あ!こういう見えかたはかわいいかもな、とか、頭のなかで考えててもわかんなかったりとか、頭のなかで考えてたことを実際にやってみると、別にそうでもなかったりとか。あ、こういう風には見えないんだなとか。そういう場合はモノを見てアイデアを考えてるよね。

森:いつぞやの泰人さんの日記で、髪を切って、納品して、みたいなすごく短い日記があったじゃないですか。

泰:ああ。納品して髪切って、献血行ってってやつ。

森:あの感覚、すごくわかるなと思って。

泰:「仕事を1つ納品した。次の日に床屋で髪を切って、献血に行った。髪を手放して、血を手放して、アイデアを手放した。」最近、モノを捨てるのが好きで。モノを捨てるから部屋がすっきりするし、新しいものを買うことができるし。情報は情報を発信しているところに集まってくるって言葉もあるし。アイデアって頭のなかでずっとぐるぐるさせてると便秘になってしまうので、定期的に排泄しないといけないなと思っていて。だから、作品をつくる行為ってやっぱ捨てる行為に近い気がしてるんだよね。自分のからだ、頭のなかにあるものを外に出して手放してしまう。つくるからそのアイデアについてもう考えないで済むんだよね。もうこれについてうだうだ悩まなくていいやって。そうすると次のことを考えられるようになる。それってやっぱり捨てたからスペースが空いて新しく入れられるってことだし。

森:アイデアを手放すのはわりとポジティブなイメージなんですか。

泰:そうだね。全然悪くない。

森:アイデアが出なくなったらどうしよう?とか思います?

泰:あんまし思わない。本当にアイデアが出なくなったら、職業変えると思ってるし。あと、考えてアイデアを出すっていう意識でいるから、考えればアイデアは出るって思ってはいる。まあそれも出なくなるかもしれないけど。

森:おお、それは理系の強さやなと思いますよ。

泰:ああ、そういうことかも。アイデアの出し方も理詰めなのかもしれなくって、組み立てれば絶対なにか形になると思ってて。あとはね、どんなアイデアも調理しだいだと思ってて。個性もかな。個性もアイデアも食材だとするじゃん。それぞれのおいしさがあるでしょ。それぞれの食材に適した調理方法があって。焼いたほうがいいのか煮たほうがいいのか、生のほうがいいのか、和風なのか洋風なのか中華なのか?っていう落としどころさえ確実に見つけ出していれば、それで調理してやれば、変な味の食材があったとしても、たぶん作品としてまとまってみんな納得がいくと思うんだよね。どんな味の変な食材でもなんとかなるんじゃないかな。つくった料理がどれぐらいの人間にウケるかはまたわからない話だけど。それに、最適な調理法を見つけるのが大変なんだろうけど。

森:笑。

泰:でもプレゼンの問題の気もするんだよね。「これはこういう料理です」って言ってから食べてもらう。『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木先生の画集か何かに載っていたイタリア紀行の話で、「イタリア料理とは臭みを楽しむ料理だ」って書いてあって。チーズとかのことだと思うんだけど、そのときに、「あ、そうなんだ!」って思ったら、ブルーチーズとかの変な味とか臭さとか楽しめるようになったんよ。

森:ほう。

泰:「これはこうやって楽しみましょう」って言われて、それが納得できればどんなまずい食材も食べられる気がするんよね。

森:アイデアも同じく。

泰:たとえば『オオカミとブタ』に対して、「ストーリーがないじゃないか」って言われても困る訳じゃん。早い段階で「これはストーリーじゃなくて写真を使ったコマ撮りという手法を楽しむ映像なんですよっ」て言っとかなきゃいけないわけよ。そのプレゼンさえうまくいけば、ダメなものもダメじゃなくなると、期待したい。

森:期待したい(笑)。願望!

泰:でもプレゼンがうまい時点で、その人は本当に頭がいい、作品づくりのうまい人だから、つくってる作品がおもしろくないはずがない。

森:他人のアイデアだったらどうします?他人のアイデアをプロデュースしてよみたいな依頼がきたりして。

泰:それもいいんじゃない。仕事だったら特に。仕事じゃなかったらなんかもやもやするかもしれないけど。いや、もやもやはしないか、別に。それがちゃんと尊敬できるいいアイデアだったら。でも自分が好きじゃないと思っちゃったら、その良さをプロデュースするのは大変だよね。

森:大変ですよね。

泰:嘘をつけばいいのかもしれないけどさ。

森:仕事でありますけどね。いや、どうなの?っていうの。ええ!みたいな会社からオファーがあったらどうします?

泰:本当にダメだったら断るとは思う。でも、もしギャラがよかったらお金のためにそれは仕事すると思います。

森:笑。正直!

泰:お金は欲しいですから。でも、絶対にできないと思っているものはあるっちゃある。…動物愛護団体、はできない。

森:へー!

泰:これは嫌われてもいいから言っとくけど、僕は動物を愛護しようって思ってない。

森:動物キャラはよく使うけど。

泰:動物は好きなんだけど。ただ、僕は豚肉も牛肉も鶏も食べるし、魚も踊り食いだってたぶん食べたこともあるし。人間ってひどい生き物だなって思いながらおいしいって思って生きてるので、動物の愛護はできないんですよ。

森:パンダのマークの某団体からオファーが来たらそれは無理って断る。

泰:すみませんが、さすがにそれは信条的に無理ですって。なぜならわたしは動物を食べて生きているので。動物園だって全然平気で見に行くし。あんなせまいところに入れられてね。水族館だって大好きでけっこうな数まわってるし。あんなせまい水槽に入れられてね。人間の満足を満たすためだけに同じとこをぐるぐるまわっててさ。ひどいなーって思ってるわけですよ。思ってるけど、思いながらそれを肯定してるもんね。

森:そんなポリシーがあるとは思いもよらずでした。8年後には信条も変ってたりして。

泰:変ってるかもね。出家とかしてるかもね。

森:いやーわかんないですよね。わたしたちの今の年代って、こっからは自分で変えていかないとどうにも変らない感じの8年やなと思っていて。これまでは、高校行ったり、大学行ったり、就職したり、自動的に環境が変っていったけど。だから、8年でみんなどんな風になっていくんやろーと思って。

泰:そうね。自分で変えていかないとね、いけないから。まあそれが大人ってことだと思っているんですが。出会いとか自分でつくんないといけないし。

森:コネも!

泰:そうそう、コネも転職も自分で動かないといけないし。

森:ほんまですねー。…ぼちぼち1時間ぐらい経ってるので、インタビューはこんぐらいにしときましょか。もっといろいろ話したい気もしますが、ひとまず今年はこんなもんで。どうもありがとうございました!

泰:はーい、ありがとうございました。


アイデアの便秘の話を聞いて、やっぱりこの人はおもしろいし、強いなぁと思いました。泰人さんは私と同じ年で、同じ愛知県の出身です。たぶん、大学の環境もけっこう似ていて、バックボーンに共通点が多いのかなと勝手に思っています。でも、考え方や見ているものはおそらく全然違っていて、ときどき、自分のなかにはないけれど共感というかすとんと納得できることを、作品や会話のなかで与えてくれるのがとても心地よいです。

そんなわけで、次回作も、今後の8年(わたしが原稿寝かせすぎたからもう7年か!)もとても楽しみです。お互いどんな作品をつくって、そして、どうなっていくのかしら。今後もどうぞよろしくお願いします!

竹内泰人公式サイト「無重力とザクロドクロ」 http://dokugyunyu.boo.jp/ 
竹内泰人YouTubeチャンネル http://www.youtube.com/user/dokugyunyu
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by moriko_2011 | 2013-04-18 00:20 | 06_コマドリスト・泰人さん

【コマドリスト・泰人さん】【1年目】 コマドリストの生態について聞いてみる(2/3)

泰:こんなことを言いながら、僕、アーティストになる気はあんまないというか。純粋なアーティストというかな、作品を売ってというか。僕の場合だとDVDをつくってとかだと思うけど、そういう気はあんまりなくって。

森:なさそうですよね。

泰:働きたいんですよ。お金を稼ぐ行為をしたいというか、社会との関わりをもうちょっとちゃんと持ちたいというか。だから、広告業界とかそういう中で「アーティストっぽい人」っていう立ち位置でやっていきたい(笑)

森:っぽい人(笑)。でも今はわりと広告とかのお仕事もされて。

泰:うん。だから今はやりたいことをやりたい形でさせてもらってるかな。ま、仕事はそんなにきてはないんですが。

森:そうですか?

泰:うん。数でいうとね、全然。僕の周りの作家のがいっぱいやってる。「今日も打ち合わせでーす」とかいうみんなのツイートを家でごろごろしながら読んでて、僕、仕事ないなーとか思って。

森:笑。でも泰人さんのとこには「いい仕事」がきそうですね。勝手なイメージだけど。

泰:そう!来るときは。

森:しかもスタッフさんもいい人が多そう。変な無理はしない感じの仕事が多そう。

泰:そうね。僕の場合、『オオカミとブタ』で業界内で有名になったから、もうああいうのをつくる人っていう扱い。

森:コマ撮りの人。

泰:最初から『オオカミとブタ』を知ったうえで仕事の話がくるから、そうじゃないものは僕にたぶんもう依頼がこないんだよね。

森:それはどうなんですか?ちょっと気になったりします?

泰:そこは実際困るので。単純に仕事の数が減る結果じゃん?

森:ああ。

泰:この前、はじめて人形をつかってコマ撮りする仕事がきて。人形でのコマ撮りははじめてですがいいですか?って言ったうえで仕事を受けて。そういった技術も身につけていかないとなって思ってる。CMだと人形アニメの割合が高いから。例えば、洗剤のキュキュットとか、風邪薬のコンタック、さらさっていう洋服の洗剤、ドーモくんとか、あとはあれだ!オーラツーっていう歯磨き粉。あれは等身大マネキンなんだけど。

森:あれ、等身大なんですか!そんな大きさで。

泰:むちゃくちゃすごいの。等身大なもんだからセットも人間サイズでできてて、洗面台とかの小道具がね、めちゃくちゃ細かかったりするの!これミニチュアでは絶対無理だなって思ってたら、実物大だった。

森:へー。

泰:そんなマネキンたちをコマ撮りしてたらしいんですが、最近のオーラツーのCMはCGだったりコマ撮りじゃない撮り方のものもでてきたみたいで、それはもしかして予算とかの問題なのかなーって。コマ撮りは撮影日数がかかるから、スタジオを借りるのも、照明機材とか撮影機材を借りるのもすごいお金がかかっちゃうんだよね。

森:スタッフさんの数も。しかも日数分の人件費がかかりますもんね。

泰:仕事も何本か、オブタ式(『オオカミとブタ』でやっている写真の二重コマ撮り)でやったんだけど、それだけの人って思われるのはいやだなと思って。『ウシウシウキウキ』でマスキングテープ使ったりとか、『guitar dog』でギターを犬にしたやつをつくったりとか、ちょっと違うテイストのものもありますよ、こういうコマ撮りもありえますよっていう作品を自主制作でつくって。自分のショーリール(作品集)みたいな感じだよね。

森:ああ。

泰:「うちの商品でこういうコマ撮りももしかしたらできるかもな」って企業側が思ってくれたらいいなって。自主制作は、そういう目的があってやってる。オブタ式はまだ続けるつもりだけど、世の中の広告でオブタ式のものが増えてきたらさ、企業も見る側も飽きるでしょさすがに。

森:多いですよね。TVとかでも観るし。でも初めて見たときは新しい!と思いましたもん。

泰:だから、あれはたまにやる感じで、と思ってる。

森:ひとりでつくってたころと、今、スタッフさんがついてつくるのと、全然違います?

泰:違う。まず、見た目のクオリティが一気にあがるよね。照明さんとカメラマンさんが撮影スタッフに入るから。『オオカミとブタ』のときは、自分でもわかってたけど、あれは素人くさくつくってるんよね。ああ、そうだ。なんでコマ撮りはじめたかっていう理由の一個で、「素人っぽくても許されるだろう」ってのがあったの。

森:そういうテイストってなりますもんね、コマ撮りの場合は。

泰:うん。3DCGだと、もう世の中にはきれいなCGや動きのいいものがいっぱいあって。美大生とか専門学校生がつくったCGとかを見せても単純に技術のなさが目についちゃって、この作品いいねって言いにくいっていうか。僕も一回3DCGを勉強したことがあって、そのとき、スタートラインがむっちゃ先にあるなと思ったの。

森:作品の内容自体を見てもらえるスタートライン。

泰:そう。そのスタートラインに立つまでにどんだけ勉強しなきゃいけないんだって。CGの作品を観るとすごく大変なのを知ってるから、がんばってんなーって素直に思うだけど、でもこれ評価されにくいんだよねって思う。CGはもうきれいなことが前提で、みんな見慣れちゃってるから。

森:それは思いますね。アイデアはいいのに、アウトプットの手段でこんなに(評価が)変るのかって。

泰:それに対してコマ撮りって動きが荒くても、そういう味だしって言い切れるし、あと、内容のアイデアだけで見せれるんじゃないかって思ってて。今は、仕事ではプロの人たちが撮影チームに入ってて、自主制作のときも撮影照明やってる友達に入ってもらって、見た目のクオリティが上がったし、きれいな色合いの表現とかやさしそうな雰囲気とかテイストをつけられるようになったけど。

森:照明でだいぶ変りますもんね。

泰:相当変るね。素人さとプロっぽさの違いはね、照明が一番でかい。カメラ機材よりも照明のが大事だと思う。照明の機材だけじゃなくて知識がいるから勉強と経験が大事で、僕の場合は友人がやってくれるから本当助かってるんだけど。

森:うん。

泰:スタッフが増えたときに映像のクオリティはよくなるんだけど、同時に、自分が何考えてるのかを全部言葉で伝えないといけなくなるんだよね。ある仕事で、大量の写真の修正と合成をレタッチ業者に頼むときに、この写真はこういう風でっていう指示を細かく全部出さないといけなくて。自分のなかでなんとなくで決めていることをちゃんと自分で意識できていないと、できあがってきたものが、あ、これちょっと違うわってなっちゃう。被写体の位置はもうちょっと右がいいなとか。でもそれって、好みだったり、(経験則とか感覚から)無意識で判断してる部分。それを言葉にして人に言わないとわかんないっていうのに気づいた。

森:優秀なスタッフさんとかやと、こちらの意図への反応というか、相乗効果がおもしろかったりしますよね。

泰:こっちが考えてなかったことが返ってきたりとか、やっぱりそれはおもしろいと思う。

森:それに、おんぶにだっこになったらあかんけど。

泰:たしかにそれはいいことだし、多くのディレクターとかが取材でさ「ひとりでつくるよりも他の人と一緒にやることでかけ算になったりとか、自分が思ってもいなかったようなものができてたりするからそれがおもしろいんです」って言うじゃん。たぶんそのとおりだし、(そのおもしろさは)自分も実感するんだけど、ひとりっきりでつくってると100%その人の個性になるから、よくも悪くも濃いものになるんだよね。

森:ええ。

泰:僕のまわりで自主制作でアニメやアートアニメをやってるやつらが、一人っきりで1年間とか2年間とかかけてつくっている作品を見ると、やっぱり濃い。

森:他人の思考が入ってこないですからね。

泰:まったくぶれないから。そういうのが、複数人でつくると、よくも悪くも薄まるというか。で、薄まるとけっこう一般的に受け入れやすかったりする。濃いとさ、わたしこれ絶対嫌いみたいなリアクションあるじゃん。アートとかだったらそれでもいいと思うけど、広告とかだったらできるだけ8割9割の人間に、できれば10割に好かれたいし。

森:泰人さんは、わりと個人でつくりたかったりします?

泰:アイデアに関してはやっぱり一人でやっちゃいたいとこはあると思う。でもカメラとか照明とかは技術がないからお願いしたいかな。アイデア自体も他人としゃべってるのもいいと思うんだけど。僕が監督の場合は最終的な判断は僕がすることになるから、そこで取捨選択すればいいんだけど、…それがね、けっこう難しいんだよね。ひとりで考えて、ひとりでアイデア出して、そのアイデアをひとりで自分でずーっと派生させてるうちは、アイデアの根幹が全然ぶれないのね。でも、その話を他の人にふって、他の人が「ああ、じゃあこういうこともできますね」「こんなのどうですか」って言ってるときに、いいアイデアもあれば悪いアイデアも当然あって。悪いっていうのはアイデアの根幹からぶれ始めるもの。そのストーリーはいいけど、それって今回の手法でやることじゃないなみたいなのも混じってくる。そのときの判断を間違えないようにしないとなって思ってて。実際、少しミスったなーっていうのが過去の仕事にはある。そうとう後になってから、これは違ったかもしれんなーって。やってる最中というか終わった後もけっこう長い間いいと思ってたんだけど…みたいなのはあるよ。

森:ほう。

泰:で、思い返すと、「これ会議で他の人の発言を僕がいいと思ったやつだ!」みたいなのが。ひとりでつくってると、アイデアの根幹がぶれないって点に関しては強いと思う。でも「それがいいことか?」って言われたら、わからんとは思う。新しい人と、今まで会ったことなかった人と一緒に仕事をして、新しいテイストとか新しいアイデアとか出てくるのっていいことだとは思うけど、そればっかりもなーって思うときもなくはない。

森:コマ撮り以外もやろうと思います?

泰:思わなくはない。けど、今のところは思わない。それは興味がないわけじゃなくて、…これは単純に自分のプロデュースの話だけど、「コマ撮り専門です」って言ってるほうがキャッチーだから。で、実際コマ撮りばっかしかやってこなかったから、他がわかんないんだよね。ムービーのやり方とかCGのやり方とか。特にCGなんかはさっきも言ったけど、すごい人たちが多過ぎるので、そこに入っていって勝てるかというと、うーん、負け戦だよね。CGの腕がすごい人と組んで、僕の出したアイデアをなんかしてもらうとかだったら、なんとか何か形にはなるかもしれないけど、僕自身がCGをやってもね。

森:笑。

泰:ムービーは1回だけ、仕事で経験があって。未公開というか流れちゃったんだけど。経済産業省が企画してたイベント(CoFesta PAO)があって。トップクリエイター10人が若手と組んで何かやるって企画で、10人のなかに高橋智隆さんっていうロボットクリエイターの方がいて。その人がつくったROPID(ロピッド)っていう40cmぐらいの身長の男の子のロボットを主役に映画を撮るっていう企画があって、僕が監督になってムービーを撮ってきたんですよ。そんときのカメラマンが本当にすごい人で、僕はただカメラマンの後ろについていっただけみたいな。

森:笑。そうなんですか。

泰:本当すごかった。あれがまさにおんぶにだっこじゃないかな(笑)。それが唯一のムービー経験だから、唯一やったムービーの被写体が人間じゃなくてロボットなんだよね。この経験、全然活かせない気がする。

森:すごい将来、活かせるかもしんないですよ(笑)

泰:そのとき、脚本も僕がやったのね。僕はもともとストーリーを思いつかない人なのね。だからこれまでギミックとか手法のアイデアだけで勝負してたんだけど。そのときはやっぱり脚本がいるので。脚本を書いて、それが選ばれたから僕が監督になったんだけど、やっぱ大変だったね。…大変だった。

森:脚本を書く作業がですか?

泰:うん。ストーリーを思いつくのがやっぱりむずかしくて。ROPID自体すごく魅力的なの。本当にかわいいし、魅力があったのよ。生きてるみたいにも思えるし、ロボットとしての魅力もすごくレベルが高くて、高橋さん天才だなと思うんだけど。だから、ROPIDに何させたいかってうのはけっこうすぐ出てきたの。具体的に言うと、ROPIDにバスに乗ってどこか旅に行ってほしいと思ってた。ROPIDがバスに乗ってるシーンっていうのをふっと思いついて、これすごくいいシーンだろうなって思って。ああ、じゃあどこかに出かけないといけないなって、どこ行こう?で悩んで。こういうシーンがいいなっていうのは出るけど、そこにストーリーのつじつまを合わせないといけない。

森:うん。

泰:当然、無理につじつまを合わせるとつまんない話にしかなんないから、そこらへんはずっと悩んでて。プロデューサーの人とずーっとしゃべってはアイデアが出なくて、アイデアを出したけど全然ダメで、みたいなことをけっこう長い間やってた。撮影してる最中もけっこう後半のシーンとかは最後までいじり倒してた気がする。で、まあなんとかなって、けっこう満足のいくストーリに。作品の出来もすごくよくて。そもそものイベント自体が震災で流れてしまったので、上映される機会がとりあえずなくなってしまったんですけど。

森:公開はされないんですか?

泰:そのイベントが再開されたら上映されるかもしれない。上映されてほしい。

森:観たいです。

泰:ロボット好きだから、あの仕事はおもしろかった。話がそれるけど、僕、SFでアンドロイドとかが大好きなんですよ。ロボットとか、もっというと人口知能(AI)とか自我とか。ROPIDくんの企画書を提出して審査を受けるときも、本当はストーリーボード的なことを書く段階だったんだけど、ROPIDがどういう存在であってほしいかみたいな語りを延々と書いて。ストーリーじゃないなこれって(笑)

森:笑。

泰:早くAIが発達してロボットが心もってほしいと思ってるよ、僕は。で、しゃべってみたい。何を考えてるのかとか。

森:モノが何を考えてるのか。人間でも何を考えてんのか謎やけど。

泰:ね。でもSFの話って結局ロボットとかが出てきたとしても、人間がどういう存在なのかってことがテーマになることが多いから、最終的に哲学的だったり宗教的だったりして、そこが好きで読んでるんですけど。AIとしゃべりたい。あと、早く自分が電脳化したい(笑)

森:ギミック中心でストーリーは思いつかないという話をしていましたけど、それは映像を撮り始めたときから?

泰:最初からずっとそう。小説とかを読むのはすごく好きなの。だけど、ストーリーが出ない。同時にキャラクターがない。こういう性格の男の子とかそういうのが出てこない。『魚に似た唄』は唯一ストーリーがあるかな。

森:『魚に似た唄』はなんかちょっと作品の毛色が違うなと。

泰:あ、あれには登場人物にも目があるもんね。そう、『オオカミとブタ』のオオカミとブタって目がないの。『ウシウシウキウキ』のウシにも目がないのね。ギタードッグも目とか耳をつけてないのね。顔がないものが僕はけっこう好きで。言うなら、あんまりキャラクターを立ててない。キャラクターをあんまり思いつけていないから目を描かないっていうのがあって。登場人物としてなにか出さないといけないから、僕は動物に走っちゃうのね。

森:動物に走っちゃう(笑)

泰:オオカミとブタだったらさ、オオカミはブタを食べるだろうってわかるでしょ、すぐに。ブタも逃げるだろうって。動物ってなんとなく世の中的に性格づけができてるじゃん。猫は天の邪鬼で、犬は純粋とか。トカゲとかだったら何考えてるかわかんないとか。世の中としてキャラクターがすでにできあがってるから、それを使っちゃうんだよね。だから、人間のキャラクターを出すのが一番やりにくいかな。あと、オブタ式のギミックとかを出すと、映像自体が複雑だから、ストーリーまで複雑にすると観る人がついていけない気がしちゃって。だから、ストーリー自体は単純なものにしたくなるとこがあるかな。

森:ええ。

泰:それに対して『魚に似た唄』だけは決して単純じゃないストーリーがある。あれは、むしろストーリーが先に近いかな。まあ同時なんだけど。壁に絵を描きたいっていう手法が最初にあって、ストーリーがでてきちゃったから、じゃあこのシーンは壁に絵を描くってことでできるなって、うまく落とし込むことができて。あの作品だけは特例。自分では、あの作品はギミック自体は凝ってないと思ってる。

森:たしかに人形アニメとペイントアニメですもんね。大きさはすごいけど(笑)

泰:うん。今は、ストーリーとかをだんだん思いつけるようになってきたと思ってる。イラストアニメもやりたいなと思ってたの。手書きでフルアニメで。

森:前、ちょっと言ってはりましたね。

泰:あ、内容言ったことあるね。あれを紙芝居か漫画みたいな形で絵描いて、自分のサイトで連載してみようかなと思ってる。

森:猫村さんばりに連載!一日一コマ!

泰:さすがにそこまでしないけど(笑)。その企画はストーリーとかキャラクターが若干ある。性格とかも。だから逆にギミックは特にないよね。ストーリーがあってキャラクターがあるって場合は、観客はそのお話のなかに没入しないといけないし、そのキャラクターに対して共感しないといけないじゃん。そういうときにそのキャラクターがイラストでできているとかCGでできているとか、人形でできているとかって意識しちゃだめなんだよね。

森:ほう。

泰:画面の登場人物たちがどういう素材でできているのかって意識しているっていうのは客観視してるってことだからストーリーに没入できてないってことなのよ。で、僕の場合はギミックを使って、コマ撮りの手法ですよっていうのを全面に出し続けるから、観てる人はずーっと映像を客観視してるんだよね。これはコマ撮りで、作者の人たちがこういう労力をかけて撮ってんだ、大変だなーと思って観てるわけ。

森:そうですかね?

泰:だと思うけど。少なくとも、『オオカミとブタ』を観てるときは、壁に写真を貼ってるんだなっていうのをずーっと意識し続けることになる。

森:ああ。

泰:作品に没入するかもしれないけど、手法のほうに目がいって、やっぱりちょっとひいた目になる気がする。だから、ジブリとかを観て「パズーがんばれ!」みたいな気分にはなりにくいと思うんだよね。例えば、アニメをやってる人間だと、ジブリを観てても、うわー作画大変!とか思ったりするわけ。それってやっぱりどこかひいて観てるわけだよね。製作の裏側を考えちゃったりしてて。そういう感覚ってストーリーに共感してほしいと思ったら邪魔な気がするのよ。作画大変と思ったうえで、感動することも当然あるわけだけど。僕も普通にしますけど。

森:うん。

泰:感情移入してほしかったら、やっぱり手法がどうこうってあんま認識しないほうがいい気がするかな。いや、でも、ギミックやったうえでストーリーはちゃんとつくれるとは思う。そう思うようになったのもけっこう最近で、前は本当無理だと思ってたけど。実際自分が思いつかなかったのもあるけど、今ならできるかもな。ちゃんとストーリーがあってギミックっていうのも。うん、できるかもね。できる気がしてきた、今。

森:おお!ポジティブな方向へ。

泰:(これまでストーリーを)思いつかないからギミックに走ってたってのはやっぱりある。得意不得意の話だけどね。

自分の強み弱みについて冷静に分析していて、変な背伸びをしないところがこの人の強さと魅力やなと思ったところで、その3へ続きます。
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by moriko_2011 | 2013-04-18 00:11 | 06_コマドリスト・泰人さん

【コマドリスト・泰人さん】【1年目】 コマドリストの生態について聞いてみる(1/3)

『オオカミはブタを食べようと思った。』(以下『オオカミとブタ』)がYouTubeで話題になり、現在は映像作家として活躍する竹内泰人さんコマ撮りの本も出版してはります!)。わたしの一方的なおっかけ(?)から交流が始まり、なぜか現在もヒポポタマスのメンバーともども仲良くしていただいています。

『オオカミとブタ』を見て「このひとの空間の捉え方、すごーい!」と感動したわたしは、彼のサイトに掲載されていた、頭のなかで考えてることをぽこっと取り出しました!という感じの日記を読んで、さらにファンになりました。すごい作品をつくるのに、ものすごく素直な文章(笑)。たまにふっと現れる、独特の視点を出発点としたロジカルな考え方やポリシーがおもしろいです。

同世代の作り手としてあらためてお話を聞いてみたかったので、ちょうど1年前の2012年の4月ごろ、「いただきまーす!」と、梅田の地下であつあつの鉄板オムライスを食べながらゆるく話していただきました。


森:このインタビュー、なんで8年なん?ってつっこまれるんですけどね。

泰人さん(以下、泰):ああ、まあね。

森:いや、わたしがちょうど35歳になるからって。

泰:8年にするのはいいんだけど、35歳はなんの数字なん?

森:え?きりがよくないですか?(わたしは5の倍数はきりがよいと思っています)

泰:まあねー…でもぼくはそこらへんが分かんない。35歳で人生いろいろ一区切りっていうか転機があるって話をさんざんいろいろ聞くんだけど、そうでもなさそうな気がするんだよな。まあ、あるかもしれないけどね。

森:けっこうあっという間な気がするんですけどね、8年。

泰:うん、だろうね。

森:あれーっていう間に過ぎて。だって8年前なにしてました?

泰:20歳だよね、今28歳だから。数えやすいね。えーっとね、20歳でしょ…

(思い出そうとしながら、なぜか苦笑い)

森:なんでそんな苦笑いなんですか?笑

泰:いや。大学生で、3回生になるときか。その時期はバグプロジェクトっていうサークルをやってて。

森:ほう。

泰:TV番組の体裁をとって映像をつくってて、スカパー110っていうチャンネルで実際に放送させてもらってたの。すごいマイナーチャンネルだから観た人が何人いるかわからんようなとこだけど。毎月30分のテープを納品して、1ヶ月の間で深夜に何回か放送させてもらってたのね。メンバーのなかでスカパーに加入しているやつがひとりもいないもんだから、誰も放送を見たことがなかったけど。

森:納品テープはあるけど、幻の放送(笑)

泰:新番組は1月スタートなので、そのサークルの世代交代は2年生の12月前にあるのね。11月にうちらの代で、新しい番組名で新番組をつくって。『賑やかな缶』っていう缶のコマ撮りを最初に撮ったのがそのとき。

森:コマ撮りの作品って授業の課題とかじゃないんですか?

泰:じゃない。僕、大学時代に授業の課題でつくった作品1個もないんだよね。全部サークルか趣味でつくってた。その次につくったコマ撮りの『黒と白の連続』は5月に撮ったはず。だから、その少し前ぐらいだね。8年前の4月は。

森:へー。ちょうどコマ撮りスタートな時期!なんか偶然。
(ちなみにわたしのやっているヒポポタマスも2006年春に結成なので、同じぐらい)

泰:あー。ってことは8年(コマ撮り)やってきたんか。

森:なんでコマ撮りしようと思ったんですか?

泰:理由はいくつかあって。一番は、一番はね…

森:『賑やかな缶』が最初の作品?

泰:コマ撮りでは最初。その前には、アニメっていうほどアニメじゃなくて、書いたイラストをアフターエフェクトで移動させるだけみたいな、モーショングラフィックスとかに近いのを2つぐらいつくってて。その後、実写のコマ撮りをはじめて。はじめた理由は「全部一人でできるから」ってのが一番大きいかな。

森:笑。

泰:サークルに入ったときにメンバーが全然足んなかったの。

森:何人ぐらいですか?

泰:最初ね、5人か6人だった。

森:その人数で毎月30分1本?

泰:オープニングエンディング合わせてだけど。大概は、1チームが10分~15分ぐらいのショートムービーを撮って、あとは自主制作でアニメつくったのを合わせたり、バラエティっぽいことやったりして30分にするんだけど。そのなかで、とりあえず僕が一人で5分の作品をつくってくるって言って。

森:泰人さん枠が。

泰:で、コマ撮りだったら撮影も準備も編集も一人でやれる。ショートムービーだと、役者とかカメラマンとかいっぱい人が要るからさ。最初につくった『賑やかな缶』は、人形をつくるんだったら時間がかかるけど、缶だったらゴミ箱から拾ってくればいいっって。

森:たしかに(笑)

泰:これはすぐできる!と分かってて、というか、すぐできるものを考えて。効果音集のCDとかも持ってたから、これと缶の動きを合わせればコンテンツになるだろうと思ってアイデアをばーっと出して。学校のゴミ捨て場から缶がたくさん入ってるゴミ袋を出してきて、同じ種類の缶を探してきて、水洗いして、とかそういうことやってた。

森:もともと、映像がやりたかった?

泰:えーっとね、映像をつくろうと思ったのは大学に入ってからで。ぼくらの時代だと、大学に入学してからPC持ち始めるやつが多かったでしょ。高校生とか中学生から使ってたやつもいたけど、僕は大学に入るまではPCでなにができるかとか全然知らなかったし。大学に入ったら先輩たちがPCで映像をつくってて、3DCGとかですごいかっこいい作品をつくってる人もいたりして、「こんなかっこいい、おもしろいアニメが個人で制作できるんだ!」って1年生のときに目をキラキラさせるわけですけど。PCを買って、別の学科で少しだけあった映像編集ソフトの授業にもぐりこんで、1年生の終わりにはじめて映像をつくって。で、2年生のときに2個ぐらい作品をつくって。で、3年生になる前に缶のコマ撮りを始めて。

森:『オオカミとブタ』はサークルの活動とは別なんですか?

泰:3年生の12月前にサークルの世代交代がくるから、そこでサークルは抜けて。4年生になってから『オオカミとブタ』を考え始めて。僕は、大学は九州芸術工科大学(以下、芸工)っていう福岡の大学に行って、院は武蔵野美術大学(以下、ムサビ)の映像学科の院に行ったんだけど。『オオカミとブタ』はね、ムサビの院試で作品提出するからそれに向けてつくろうかなと思ったの。そしたら全然間に合わなくて。かなり早い段階でこれ間に合わないなってわかってて。だから院試の面接で、院に入ったらこういう作品つくろうと思いますって言って『オオカミとブタ』の説明をした。写真を使ったアニメーションを今、考えててって。撮影は大学4年生の3月までやってて、編集は院に行ってからの4月からスタートさせて。だから、コンテストとかに映像を出したときの僕の肩書きはムサビの院生なんだけど、映像のなかには明らかに九州の風景が写ってて。西鉄電車とか走ってて。

森:ムサビの院に行こうって決めたのはいつごろ?

泰:大学4年生になってから就職するか院に行くかってなって、僕は院にいきたいって思ってて。親もそれは許してくれてて。でも、芸工の院にそのまま行くのは嫌だなと思ってて。

森:それは専攻できるジャンルがちょっと違うからですか?

泰:いや。僕、4年生のときはプログラミングの研究をやってて、でも映像制作がしたかったから、それもあるけど。もうちょっと交流を広くしたいと思ったの。芸工大はすごく小さい学校で、全部で5学科あるんだけど、4年生になるころにはたいがいの人と友達となれるの。キャンパスも小さいもんだから、知らない人でも、あ、見たことあります、みたいな。そのまんま院に行っても友達増えないなと思ったの(笑)

森:笑。

泰:もっと違う人たちに会いたいというのと、あと、特にアートとして映像をやっている人たちと知り合いたいと思って。芸工大は別にアート色が強くなくて、アート色がないわけじゃないけど、もうちょっと工学的というか。芸術と工学を合わせて芸術工科大学にした大学なので。

森:うちの大学もそんな感じでしたよ。「科学と芸術の出会い」が大学のテーマだった気がする。

泰:その思想はすごくいいと思うんだけど、どっちかっていうかデザイナー寄りだよね。言うなれば、完全な美大生に会ってみたいっていう。で、映像学科の院があるところを調べて、ムサビがおもしろそうだったからムサビに行って。

森:やっぱり、大学と院と全然違いました?

泰:学校の雰囲気でいえばね、全然一緒だった。生徒の雰囲気とかもだいたい一緒。でも芸工のほうが、入試のときに学科試験、勉強の割合がすごく高くて、単純に頭のいいやつらがくる割合が高いのよ。頭がいいのにアートみたいなことやってるやつらのが変なのが多い。賢くてバカなことやってるから。

森:笑。捨て身ですもんね。

泰:純粋に最初っから変なやつらは、むしろほほえましいぐらいで。賢いのに変なことやるやつらのほうが、ちょっとキャラが濃いよね。おかしい(笑)。でも雰囲気は似てるなと思った。たいして変わりないなって。別にムサビの人たちがバカだったとかいうわけじゃないんだけどね。

森:笑。なんとなくわかりますよ。いろんなことを考えて考えて、ここにたどり着くのかこの人たちは…みたいな。

泰:そうそう。妙に理屈っぽかったりね。直感でやってるけど理屈っぽかったり。その裏打ちされた理論でしゃべられるとこわいよね。

森:笑。わたしは大学でデザインを学んだので、作品の意図とかを聞かれたらちゃんと理論でも説明できるようにってのは意識しますね。

泰:大学4年生のときに卒業制作をつくったり卒論を書かなきゃいけなくて。うちの大学もデザイン系だったから、映像作品をつくったとしても何でそれをつくったかっていう説明をちゃんとしないといけなくて。時代とか歴史とかがあって、今これが必要とされてるからとか言って。先輩たちで多かったのは、アニメ作品をつくるんだけど、市の観光アピールのためとか。なにかしらちゃんと社会とのつながりをつくんなきゃいけなくて。なんかやっぱりむりくり理由も作品もつくってる印象があってさ。

森:ええ。

泰:僕は「単純におもしろいと思ったからつくったんです」以外の説明がしたくない人だったので。卒業制作で自分の作品をつくって論文書くのは絶対いやだと思ったの。それで、4年生のときは画像工学のプログラミングをやってるゼミに入って。プログラミングはプログラミングの時代背景がしっかりあるし、こういう仕組みでつくりましたっていうプログラミングの説明をずーっと書いたら論文は完成するんよ。これだったら全然納得して作業しやすい!と(思って)。

森:目的とアウトプットがちゃんと合っていると。

泰:そうそう。別にプログラミングは好きだったから。そこで1年間、先生の指示のもと、先生がつくりたいと思ったプログラミングを僕がしますって言ってプログラミングをしてた。

森:笑。自分のつくりたいっていうものと、デザインの課題としてアウトプットするものってやっぱりギャップがありますよね。

泰:だから、僕、学校の課題はあんまし好きでもなかったのかな。だって、おもしろいものって理屈抜きにおもしろいって言いたいし。それが課題のテーマとずれてると課題としてはダメじゃん。そういうズレ、めんどうくさいなーって(笑)。あくまでデザイナーではなかったんですけど。デザイナーはそこをリンクさせる技術がいるんと思うんですけど。

森:わたしは、別物な感じで考えてましたね。デザイナーとしてつくるものは、自由解答のテストの解答みたいな。

泰:うんうん!

森:それはそれでなんかまあおもしろい。お客さんと一緒に(問題を)解く。で、自分が得意なところが、形をつくったり、色を考えたりとかいうところやからその技術を使うっていう。

泰:そうやって最初から課題があったうえでつくることは僕もやるんだけど。今、仕事でクライアントがあるところからスタートして映像考えたりするのことも多いし。自分がぽんっと思いついちゃったものに対して、むりやりあとから理由づけするのは無理って思った。

森:ああ。


なるほど、だから彼の作品はいやらしさがないんだなと思ったところで、その2へと続きます。
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by moriko_2011 | 2013-04-18 00:02 | 06_コマドリスト・泰人さん

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