趣味の、長期ゆるゆるインタビュー企画です。 


by moriko_2011

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【会社の上司・M部長】【2年目】 突然ロン毛になった理由について聞いてみる(3/3)

森:関西に行って、「小娘、何しに来た?」って感じですよ。

M:お客さんと一回関係つくるまでがすごい大変じゃないの?大変っていうかつくれないよね?

森:うん。人にもよるかもしれないですけど、東京ってわりと「仕事は仕事」って一線ひくじゃないですか。お客さんによるのかもしれないですけど、関西だと初回の打ち合わせとかでも冗談とか言い合ったり。東京だったらけっこうお客さんと仲が良くならないと、そういうのってあんまりないじゃないですか。でもしょっぱなからこうどんどん行く感じに最初ドギマギしました。

M:ああ。だってそんなの慣れてんじゃないの?大学時代、京都にいたんだから。

森:でも実際に社会人として仕事の仕方を覚えたのは東京ですもん。基礎として染み付いてますよ、やっぱり。(半年経って関西での仕事に)少しは慣れてきたかなって感じです。

M:でもダメだよ。

森:え?何がですか?

M:「もう二度と戻ってくるな」って言って送り出したんだから、うちの部署には戻さないからね。

森:大丈夫ですよ!(笑)。どうにかやってますよ!でも、異動してから今まで温室な環境で大事に育ててもらったんだなーって思いました。

M:温室っていうか、森さんが配属される前に「新人は全員が育てるんだ。アドバイザーだけじゃない」って部のメンバー全員にメールしたんだよね。って。まあ、どこまで浸透してたかわかんないけど。まあでも、育て方はあまかったね。

森:そうですか?あまあま?

M:あまい!一度も泣いたことないだろ。

森:笑。私、部署のみなさんもですが、Mさんには本当に感謝してますよ。関西支店に行ってから特に感謝しました。異動させてもらったいきさつとかを後から聞いて。

M:感動秘話だからね(笑)。

森:あと、関西支店に行って営業と制作の兼務になって、再販案件とかで、あまり動いてくれない親会社の営業さんとかと仕事をして、あ、もちろんすごくデキル営業さんもいるんですけどね。女性はちゃんと(特に年上の)男性に動いてもらうように仕事しなきゃだめなんだなと思いましたよ。ちょっと反省しました。

M:ああ、それは別に男女問わずじゃない。みんながみんな同じじゃないからね。
女の人は比較的「営業は営業!みんな同じ力を持ってないのはおかしい!」って発想に行くんじゃないの。「あの人はダメだから一緒にしたくない」とかね。ある意味一緒に仕事したくない人もいるけど、

森:それでも一緒に仕事をせざるを得ない人もいますからね。

M:せざるを得ない人とどうつき合うかだよね。

森:だからうまいこと動いてもらえるように段取ったり準備したり…って小娘にこんなことを思われてるの相手も嫌だろうなって思いながら仕事してるんですけどね。意図が見えないようにがんばろうって。

M:おかしい仕事をする人はお客さんだって気づくんだよ。だからこっちがちょっとプラスαな仕事をすると、対比効果でもっとこっちを向いてくれる。それを利用したほうがいいと思うよ。自分の負担が増えるけど、このちょっとおかしい仕事をする人がいるから自分はプラスαで評価されてんのかなとか。なにこれ、俺、説教モードになってんのかな。大丈夫?

森:大丈夫ですよ(笑)。

M:そこがね、分かんない人は分かんないんだよね。そうするとお客さんにも好かれない、自社の営業とも確執が強まる。

森:営業さんとかがあまり動いてくれない人だとして、「こっから先はそっちの仕事でしょ!」ってわかってるんだったら、それができるように適当にお膳立てして引き渡したほうが、トータルでみると余分なエネルギーのロスがなくて楽じゃんと思います。こんなえらそうなことを言って、私、見えてないものがたくさんあるんでしょうけど。

M:最終的には、この人に認めてもらいたいっていうお客さんに認められることだと思うよ。すべてのお客さんに認められようなんて思わないしさ、なかには変なお客さんもいるじゃん。そういうお客さんはいかにケンカせずに手を切るかだよね。そういうのをさ、全員に学んでほしいんだよね、OJTで。うちの部の僻地にいた人たちはさ、同じお客さんとずーっとつき合ってきて、まったく免疫がついてないから、ちょっと面倒くさいお客さんがいるとしゅん…としちゃうんだよね。

森:ちょっと話が変わって、制作部隊のほうが余裕がある感じがするんですよ。営業と制作だと。制作のほうが、お客さんのことを考えて細かいところまで対応できるなって。営業のほうが上っ面っていうかあくまで窓口。
で、自分が営業を兼務になってみてですけど、営業のお客さんの対応件数からすると、正直細かいところまで行き届かないんですよ。私の能力の低さのせいもあるんでしょうけど。ここから先は制作部隊に任せてるし、しょうがないかって割り切る。制作の人を信頼する。ただ関西の場合は制作が社内にいなくてそれが協力会社さんになるんで、どうなのかなこの対応?って思いながら仕事をしてます。

M:ああ。

森:だって、うちの会社より制作会社の人のほうが完全に信頼されてる状態で仕事を引き継いで、すっごいやりにくいですよ! 今、ちょっとはマシになってきたのかなー?なってるといいなーって感じですけど、それも若いオネエチャンパワーがなかったらどうなってるんだろう、これ?って。

M:ああ、私がおばさんになったらみたいな感じね。

森:20代が終わるし若いオネエチャンパワーが効くのはあと2年ぐらい?みたいな。年を取る前にきちんと知識と力を身につけてって思ってますけど。

M:うん。それはね、一理あるね。保険の営業とかでもおばちゃんが来るとシャットアウトモードだけど、お姉さん的な人がくるとなんか話聞いてみようかってなるじゃん。

森:笑。私、若づくりはある程度しておこうと思いました。Mさんは今、お仕事としてはどんな感じなんですか。マネジメントですよね。自分が制作とかはもうしないですよね。

M:俺が制作はしないじゃん。俺が客に認められたいと思っても部下の人たちがそう思ってくらなかったら空回りだよね。今までの俺の上司がそうだったけど、過去の人脈とかでこのお客さんに認められたいからってやってても下がついていかないと、「あなたはいいけど、あなたの部下たちはいまいちだね」みたいなことを言われて恥をかかされて撃沈みたいな。俺もそうだよね、俺が認められたいと思って「(部下の)彼にまかせますから」って無理矢理連れて行っても、その人がのってくれないと、破談、むしろ逆効果だよね。

森:そういうMさんの仕事イズムは最近どうなんですか?部内にしっかり浸透中ですか?

M:ダメだね!全然部内に浸透してないね!

森:私が入社したころとかはけっこう全体に浸透してたっぽいですよね。

M:うん。あのころが俺の考え方とかが一番浸透してた。考え方っていうか…まあ無理矢理だけど。こう思うっていうことをちゃんと言ってたし、それを理解してくれるメンバーが集まってた気がする。その後、組織変更があって部長になったぐらいから…まあ、俺がいけないけどね。ちょっと(現場から)離れたんだよね。

森:あれ、なんだったんですか?Mさん、部長になって周りへの接し方が突然変わりましたよね。

M:「部長っていうのはどうしたらいいの?」っていう迷いがあって。「俺が全面に出てたらマネージャーは育たないよね」って。まあ、いろんな人の意見もあったりして、「出過ぎ!」みたいなことも言われ。

森:上の人からそんな意見があったんですか?

M:「キミがいなくなっても成り立つ組織をつくんなきゃいけません」みたいなことを上の先輩方から遠回しに言われて、少しこう手をひいたんだよね。権限委譲か。そう、「権限委譲」っていう言葉がキーワードとしてガツンときたんだけど、「権限委譲をもっとしろ」って言われて。で、し過ぎたね。極端だよね。

森:笑。

M:まあ、口出ししなかったよね。イラっときても。

森:不思議な感じでしたよね。

M:でしょ? 現場に、下に降りてこないみたいな。

森:フラストレーションたまってそうだなぁと思ってました(笑)。それまでは、けっこう実務的なところも含めてMさんの目が行き届いている感じだったので。

M:権限委譲するにあたって最初はイライラして当然だみたいな話はされたしさ、いかにそれを転がすかってことだけど、まあ、失敗したね。むずかしい。今、派遣社員も入れると部下が100人ぐらいいるんだよ。場所もまだ一部は点在してるし、本当にむずかしい。「特定の人と仲良くするのもいけないのかなー」とか思ったり。

森:それ、いつぞや言ってはりましたよね。突然、飲み会に出てくれなくなったり。

M:とはいえ、慣れたメンバーがコピー機のとことかで話しかけてくるとまあうれしくて、ぺらぺらぺらぺらしゃべっちゃうんだよ。

森:笑。

M:で、白い目を感じるんだよ。「なんだ、お前は子飼いの人たちにはやさしいのか」って。勝手な俺の被害妄想ね。悩むっていうか模索中だよね。どういうキャラでいったらいいのかなーって。

森:なんかそろそろ吹っ切れたのかと思ってました。

M:そんなことないよ!どんどん悩みは奥へ奥へ。僻地のメンバーが本社に集結することによって。どうしたらこういう人たちと融合できるのかなって、そういうことばっか考えてるよ。どうしたもんかね。キャラは悩ましいんだけどさ、でも仕事ってダメ出しされてなんぼじゃない?

森:まあ、うちの会社だと言ってくれる人自体あんまりいないですからね。

M:でしょ?俺はダメ出しされて学んできたよ。担当のころ、飲み会で主任の悪口を課長に言った訳よ。そしたら「直属上司の悪口をどうして俺の前で言うんだ!」みたいなことをさんざん言われて、ショックだったのね。話を聞いてほしくて言ったんだけど、今思うと、まあ言い方が悪かったかな。本当に話を聞いてほしかったら、ちゃんと場を用意して「我慢できません」ぐらいのことを言うべきだったのに、酔っぱらった勢いでただのグチをがーって言っちゃった。で、課長にきついことを言われてしゅん…となったけど、今は言われて本当によかったと思うしね。
なかにはマイナスのものもあるよ、俺が上司になったら絶対言わないってことを言われたこともあるし。でもそれは貴重だと思う。当時、大嫌いな上司がいっぱいいたんだけどさ(笑)、今思うとすごい感謝してるよね。「あなたがいたから、俺は同じ轍を踏んでない」みたいなさ。でも、もしあなたがいなかったら、俺も同じことを言ってたかもしれない。だから説教してくれる人をありがたく思えと。言われたそのときはイライラするかもしれないけど、長い目でみると、「あの人にあんなこと言われてよかったな」って思うよね。

森:言うのにもパワーがいりますしね。

M:もちろんもちろん。パワーがいるけど…いや、節操のない人はパワーなんかいらないよ。まったくそんなこと考えてない人は言いたい放題だよ。

森:でも私、あんまり会ったことがないですよ、そういう人。幸運なのかもしれないですけど。

M:幸運じゃないよ。今、やさしい人ばっかだよ。そこが森さんにとってプラスなのかマイナスなのかわかんない。

森:あ、関西に行ってからお客さんで1件ありましたけどね。

M:ああ、お客さんかもね。社内的には、パワハラとかいろんな背景があってさ。なかなかできないからね。

森:社内的には、自分はすごく気を使われてるなって思いますよ。

M:気を使ってるよ! 俺だって気を使ってるよ! 俺だってさ、「おい、森!」って思ったことが何百回あるか。

森:あるでしょうねー(笑)。

M:あるよ!(笑)。お前百年早いよ!みたいなこと普通に言ってたよね。だけど、そこは「これ時代かなー世代かなー」と思ってぐっと我慢して。

森:笑。

M:だけど、俺の上司とかもたぶん「時代だなー世代だなー」と思って言わなかったことがいっぱいあるんだろうなーと思う。それでも我慢できなかったことを言ってくれてたのかなとか。わかんないね。でも、言いたいことを言えるキャラをつくるっていうのはひとつテクニックだよね。俺は今、それができてないんだよね。

森:今はあんまり言わないキャラなんですか?(以前はけっこう言うことは言っていたような…)

M:言わない。部下が「すみません」って謝ってきても、「まあいいよ」って。言ってもせいぜい「繰り返さなきゃいいよ」って。

森:なんだか変わりましたね。

M:心の中では違うよ。そこはぐっとおさえて「まあ、次は気をつけましょう」って。
俺が本当にやりたいことはね、前のインタビューでも言ったけど、今のうちの会社でいうマネージャーだよね。

森:部長じゃなくて。

M:10人の部下で半期で1億円を売り上げようっていうグループが一番幸せ。

森:その規模って、一つの会社だった場合も成り立つんですか?

M:10人で1億円?たぶんそんな会社つぶれるよ!今のうちの会社のなかでそういうポジション。失敗もありつつ成功もありつつ文句も言いつつ言われつつの10人。固定メンバーじゃないよ、出入りはあるよ。送別会もやって歓迎会もやっての10人。それぐらいが一番いい。自分のやりたいことが一番できるよね。
役職がついて手を動かせないっていうジレンマに陥ると、手を動かしたい本当に優秀な人はたぶん転職していくんだろうね。だけどさ、家庭があるとかさ、あと何年はがんばんなきゃいけないみたいなのがあると「いやいや、そんなリスキーなことはしちゃいけない」って。

森:でも、Mさん、少し前に他社からのスカウトがあったんですよね?

M:スカウト?よく知ってるね。

森:だってMさんが自分で言ってはりましたよ(笑)。

M:その話した?あれなんでなんだろうね、それ以降ないけどね。「あなたのことを推薦してくれる人がいる」みたいな話だったかな。インチキくさいけど。実は俺、新入社員のころにも同じような話があったの。

森:へー!

M:会社入って1年目に。まあ当時バブルじゃん、どこの会社も人が欲しいんだよね。「あなたのことをすごく買ってくれてる人がいて、今の会社じゃ彼はもったいない、転職させたいって言ってるけどどうか?」みたいな電話がかかってきて、びっくりしてさ。当時、課長にその話をしたの。そしたら「お前、アホか?」と。「新入社員のペーペーのお前に誰が何を期待するんだ?」みたいなことをさんざん言われて、「少なくとも俺はお前にはまったく期待していない!期待してくれる人がいるんだったらいいんじゃないの、その話?」って言われて突き放されたのね。俺、深く考えずに軽く言っちゃったのね。世間の話題としてこんな電話があったって。そうしたらもう、こき下ろされたよね。「お前なんかいつだって辞めていい」って言われてさ。「ああ、そんな風に思ってたの?」って思ってすごい傷ついたけど、今思うとすごい感謝だよね。当たり前だよね。今思うとその電話はインチキだよね。

森:わかんないですよ。

M:真偽のほどはわかんないけどさ。「(自分を推薦してくれてる)その人誰ですか?」って聞いたんだけど、「いや、教えられない」って。俺ね、それ会話を全部録音したの。電話があった話を課長にしたとき、録音したのを聞かせたの。さんざん説教くらった後に「こういうしたたかなところはすごい。お前やるなぁ」みたいなこと言われた。

森:笑。

M:俺、本当いい先輩に恵まれたよね。そういう風に、さんざんこき下ろされてしゅん…となったところを救ってくれるみたいな人とか。当時は傷ついたけど、今思うとそんなこと言ってくれたことをすごい感謝してるよね。「人に恵まれてるなー」と思ったエピソードのひとつ。あ、今日ちょっといいこと言うけど、

森:笑。なんですか。

M:そういう思いをいかにするかだと思うよ。「俺はラッキーだわ、人に恵まれてる」そこじゃない?

森:そうですね。

M:幸せの基準は人によるけどね。俺は「この人に会えてよかった!」っていうのが何人いるかが基準の一つだよね。これ、書いといて!

森:今年の名言(笑)。

M:いい人悪い人含めてね。悪い人も含めてだよ。俺、こういうやつは絶対許せない!俺はこうはならない!みたいなのも含めて。

森:あります?そんなの。

M:あるよ!さっき言ったじゃん。俺の悪口ばっか言ってるやつとか(笑)。今はもうね、お互いの気持ちがわかって、お互い何も言わずいいポジションにいる。お互い思うところはあるけど、言わない。

森:Mさん(笑)。

M:俺は森さんに(仕事で)嫌な思いをもっとしてほしいんだよね。

森:なんでそんなにSなんですか(笑)。

M:むかついて眠れないぐらいの思いをもっともっとしてほしい。

森:人生経験ですしね。最後に、今の(ロン毛の)髪型、気に入ってます?

M:いや、短いほうがいい。これアスリートじゃないもんね、この髪型。

森:短髪のが絶対いいですよ!

M:たださ、おじさんはやっぱみんな(髪)短いよね。おじさんでロン毛はそうそういない。ロン毛がいたとしてもちゃらい。

森:うさんくさい!

M:そこを解決したいよね。いい年してロン毛なんだけどかっこいいみたいなところを目指してんだけど、佐藤浩市みたいな。

森:はい(笑)。

M:でも次のインタビューのときはたぶん短髪!


この日、ダイエット中と言いながらメンチカツを頼み、最後にポテトサラダと焼きそばをオーダーしていたMさんへのインタビュー中、私はずっと「短髪のが絶対いいですよ!」と繰り返していた気がします。

このインタビューの後、しばらくしてMさんはさわやか短髪姿に戻りました。そして、このインタビューを書き起こすまでの2年のあいだに、私ははじめて会社の仕事が嫌で泣きました。誰かに泣かされたというよりは、自分の仕事のありかたが嫌でみじめで泣きました。Mさんが期待していた社内の給湯室ではなく、大阪環状線の電車内で号泣です(笑)。この記事を書いている今は、それを乗り越えようとしている過渡期が続いている状態だと自分では思っています。

というわけで、3年目(2013年)のインタビューはすっ飛ばしてしまいましたが(申し訳ありません…)、無事に復活しましたのでひきつづきよろしくお願いします!
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# by moriko_2011 | 2014-08-18 07:16 | 02_元上司のMさん

【会社の上司・M部長】【2年目】 突然ロン毛になった理由について聞いてみる(2/3)

M:こないださ、ふとしたことからAKBの映画を観たんだけど。いいよ、あれ。観な!泣ける。

森:笑。薦められた!

M:泣ける、あれは。俺はAKBをおっかけてはいないけど映画を観てね、見直した…まではいかないけど、これは歴史だなと思った。

森:甲子園に近いものがありますよね。10代のあの頃をすべて捧げるみたいな。

M:それ、いい例え。ドームコンサートのドキュメンタリー映画なんだけど、泣けるよー。今年一番泣いたね。秋元康がいいんだ、また。俺、秋元康に感動したのかな。すばらしいね、あの人。

森:ぼろ儲けですかね。

M:儲けてるのは儲けてるんだけど、やっぱり経営者とかリーダーとかいう視点で見るとすごいなと思って。うちの部が一番女性率が高いから参考にしなくちゃと思って。

森:笑。

M:本当に多いんだよ、他の部に比べると。そこがまた運営を難しくしてるとこのひとつなんだけど。

森:そうなんですか?

M:女の人はレールが見つかると一直線に走るからね。

森:シューンっと。

M:別に男女差別じゃないけど、そういう傾向があるね。

森:(そうなの?)Mさん、けっこうわりと(仕事において)女性は男性はって言わはりますよね。

M:言うね、俺ね。これ男女差別につながっちゃうのかもしれないけど。

森:そんなに違うもんなんですか。仕事してて。

M:男と女で全然違うね。

森:それは昔から感じていたのか、マネジメントするようになってから感じたのかどっちですか。

M:マネジメントするようになって感じた。女の人はむずかしい!

森:笑。そうなんですか。気分にムラがあるとか?

M:気分っていうか…よく話題になるのがさ、自分がその仕事好きかどうかでいろんなことを決めちゃうから。

森:男性は違うんですか。

M:(女性は)グループのためとか、リーダーとしてとかそういう視点が少ないかなって。全員が全員そうじゃないよ。

森:ふーん。

M:あと、相手が男だったら、なさけない仕事してると「お前、男のくせにみっともなくない?」とかふつうに言えるんだけど、女の人にはそんなこと絶対言えないじゃん。「あなた、こんな仕事の仕方してたら社会人としてみっともなくありませんか?」って心の中で思ってたとしても、(女性には)言えない。

森:えー!なんで。

M:それはパワハラだよね。すぐ通報されちゃいそうで。

森:(男性にもパワハラじゃ…そして「男のくせに」はセクハラじゃ…(笑))男性に言うんだったら女性にも言えばいいのに。

M:(女性だと)そういうこと言うと、力のある人でも機嫌を損ねてこちらの言うことを聞いてくれないとか。裏で女子会とかやって、俺の愚痴をふれまわるとか。そういう誰かの愚痴とか評価に影響を受ける人が多いよね、女の人は。芯のある人はいいけど。

森:女性は、自分なりの評価が確立されてない人が多いってことですか。

M:…(しばし、沈黙)

森:言葉を選んでいる(笑)。

M:言葉を選ぶと…俺は女子会が嫌いなんだよ!

森:笑。まあ、(私も含め)女子って年齢じゃないですしね。

M:前、「ああ、この部は終わったな」って思った瞬間があったんだよ。それは、ある人が中心になって女子会をやってるっていうのを聞いて。女子会が発展して、次に女子会に呼ばれる無難な男子、呼ばれない男子が出てきて、そこで俺は「ここの部署は終わった」と思った。「(仕事とは関係のない派閥っぽいものができてしまう)こういう感じになっちゃったのは、やっぱり俺、何かがいけなかったなー」って思ったね。

森:笑。そんなことがあったんですか。

M:うん。女性のパワーってね、いまだにどうしていいのかわかんない。全員が全員じゃないかもしんないけど、(女性は)表側は仲良くしてんだけど、実際はギスギスしてるみたいな。

森:うちの会社は女性のギスギスってそんなにないと思いますよ。

M:いや、あるある。あるんだって。

森:あるんですか。私はわかんないですけど。女性も群れずに個人プレーみたいな人が多いと思ってます。

M:個人プレーな中でも共同でやんなきゃいけないところがあるじゃん。そういうときにギスギスしてる。というか、女の人は基本個人プレーだよね。

森:いや、わかんないですけど。

M:女性の管理職が少ないのはそこなのかなって。表面上は合わせるけど、根本にグループのためとか、リーダーとしてとかそういう視点が少ない。どうですか?女性のマネージャーとかがいないのはなんでだろう?って。うちの会社だけじゃないよ、世間一般見てもそんなに多くないよね。

森:社会進出が遅かったからじゃないですか?

M:うーん、それだけかな。

森:あと、気分にムラが出るのはしょうがないでしょうね。

M:笑。気分にムラが出るのは男だってそうだよ。

森:でも、身体的にどうしても出てしまうじゃないですか。

M:それはしょうがないよ、わかるよ。男だってさ、二日酔いになったらさ、気分にムラが出るもん、次の日仕事できない。

森:いや、だって自分の意志とは関係なく月イチで定期的にやってくるんですよ、そんなのが。

M:そうだけど、それが理由でマネージャーになれないの?

森:原因の一つとしてあると思いますよ、気分のムラ。だって意味分かんなくないですか?ダーダー血を流しながら仕事するって。

M:まあ、でもよくできてるよね。不思議だよね。

森:会社行きたくないわー…ってなりますよ。女性の場合、気分にムラは自然現象としてどうしても出てしまうので、って何の話をしてんだって感じですね。

M:いや、この話、大事。最近の悩みのひとつはそれだもん。部下に女性がいっぱいいるけど、どうしようって。

森:だって(個人差はありますが)月の半分以上はだいたい気分悪いんですよ。

M:え、半分以上?!(笑)

森:(個人差はありますが)その前の1週間とかも本当に気分が悪いですし、真っ最中の1週間ぐらいは最悪だ!って感じですし、そうしたら、4週のうち半分。半分しか快適な状態がないんですよ。情緒不安定になるし、私は月の半分は自分のことを気がふれていると思ってます。

M:男だったら、昨日飲み過ぎちゃってさーって言えるけど、女の人は言えないもんね。女の人同士は言えるかもしれないけど。

森:そりゃあヒステリックにもなるわと思います。そんなイライラしてるときに、横で男の人がなめた仕事してたら余計にイラー!ってくるんじゃないですか。

M:それをね、(なめた仕事に関しては)はっきり言えばいいんだよ。男の場合はたぶん言うんだよ。で、ケンカになっちゃったりとかもするけど。女の人の場合は、言わずにためて、

森:まあ、あんまり言わないですね。通常モードだったら流せることかもしれないし、そういう状態で誰かに意見すると大抵ろくなことがない。

M:でも言わずにためるけど、言う場があればばーって言うし。名前は出さないけど、とある人が俺の悪口をもうあっちこっちで言ってるっていう情報を耳にして、

森:笑。

M:その人にメールしたの。「あなた、私の悪口をあっちこっちで言ってるみたいですが」

森:メールしたんですか!(笑)

M:「賛同できる人には言ってください。相手が賛同してないなと思ったら、相手も気分悪いだろうからやめたほうがいいですよ」みたいな。

森:それ、いつごろですか?

M:いつだろ?もうけっこう前だよ、1年とか2年前じゃない。そうしたら返事がきたよ。「部長という立場にありながらこのようなことをメールするのでしょうか」みたいな。

森:なんですか、そのバトル(笑)。

M:返事しようかと思ったけど、もう放っておいた。でもそれ以来ね、いろいろ周りに聞くと俺の悪口は言ってないらしい。

森:いやー、こわいこわい。

M:まあ、嫌なんだよ。陰でごちゃごちゃ言われるのが。そのメールにも「許せない部分があれば、直しますからはっきり言ってください」って書いた。

うーん、働く姿勢として、男性と女性で性質的に違うところがあるのかなぁ?小娘にはあまり実感がわかないなぁと思ったところで、その3へと続きます。
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# by moriko_2011 | 2014-08-18 07:14 | 02_元上司のMさん

【会社の元上司・M部長】【2年目】 突然ロン毛になった理由について聞いてみる(1/3)

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M部長の1年目のインタビューはこちら。
「会社での出世について聞いてみる」
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コンプレックスのライブの話からはじまり、会社の仕事や出世のあれこれについて伺った元上司・M部長への1年目(2011)のインタビュー。あっという間に1年が経ち、2年目(2012)のインタビューです。

ということで私が関西に転勤になって半年ぐらい経った2012年8月のある日、新橋駅でM部長と待ち合わせると、さわやか短髪だったはずの部長はなぜか中途半端なロン毛で現れました。ひさびさの再会でテンションが上がったのと髪型への違和感で、今回のインタビューは新橋の飲み屋でひたすら飲みながらほぼロン毛へのつっこみで終わってしまった気がします!
(というわけで、またもや2年も寝かした記事をお届けします。すっかり熟成して発酵気味です…)


森:髪型変えたのはなにかきっかけがあったんですか?

M部長(以降、M):あー、だから、

森:イメチェン?

M:まず!これから俺は、髪の毛は、決して、増える方向にない!

森:笑。はい。

M:抜けるか白髪になるかどっちか!

森:はい。

M:って考えたときに、人生最後のロン毛に挑戦しようかなって思ったの。それがきっかけ。

森:人生最後のロン毛に!え、今までロン毛だった時期があるんですか。

M:あるある。10年ぐらい前はもっとすごい長かったよ。

森:えー、意外!でも短髪のが似合うって言われません?

M:…どうかなー。誰も何も言わない。

森:好みの問題かもしれないですけど。

M:ああ、そうだね。俺、(髪)短くしたときのほうがほめられるかもね。

森:うさんくさいですよ、Mさんのロン毛。(←大変失礼)

M:まあね、ちょっとチャラいよね。最初は「キムタクみたいにする」って言ったんだけど、

森:(美容師さんに)止められました?

M:「ちょっとやり過ぎじゃないの」って言われて、雑誌でサンプルを見せてもらって今の髪型に。これ、まだ伸ばしてる途中なんだけど。ちなみに次の髪型も決まってて、それ見せてあげる。(iPadでさらなるロン毛の写真を見せながら)これ、これで行くから。

森:攻めますねー。Wさん(←インタビューをさせてもらっている会社の先輩。デキル人で、Mさんの部下)が産休から復活したら絶対つっこみが入りますよ。

M:そういえばなんか、(産休中のWさんから)メール着たんだよ。「森さんのインタビュー記事を見ました。そしたら会社に行きたくなりました」みたいな。

森:へー!うれしいですね。

M:またさ、そのメール笑っちゃうんだよ!もう大爆笑だった、俺。「ひさびさにMのことを思い出しました。」って書いてあって。「さん」が抜けてて。

森:笑。

M:速攻で返事書いて、「なんだよ、呼び捨てかよ!」みたいなさ。そしたら「すみません、何度もチェックしたのにミスりました」みたいな(笑)。

森:業務からしばらく離れてるから(笑)って。

M:おもしろいんだよ。最初、すごい丁寧な文章で「ごぶさたしております、お元気ですか」って始まってるのに、いきなり呼び捨て(笑)。

森:Wさん、狙っているのかもしれない(笑)。

M:ちょっとさ、今日は何をテーマに話すんの?

森:今年は実は何にも決めてなくて。あまりに衝撃だったんで、もうとりあえず髪型の話題でいっかって今思ってたんですけど。Mさん、この1年で何か変わりました?

M:1年間で?それはちょっと2軒目で語ろうか。…1年で変わったかもね。

森:あっというまですね、1年。

2011年の夏~2012年の夏の1年で変わったことと言えば、2011年の12月にWさんが産休に入ったこと、2012年の1月に私が関西支店に異動になったこと、その後、拠点が点在していたMさんの部署のメンバーが本社のワンフロアにほぼ集結したこと、その他、人の入れ替えがこまごまあったことぐらいでしょうか。

M:いやー、俺ある意味ね、最近ちょっと病んでるかも。4月ぐらいからね、いろんな人に言われる。「Mさん、ちょっと病んでるかもしれない」って。

森:え、それは髪型…(がよくわからないことになっているから?)

M:笑。髪型の変化とともに。心境の変化があるからこれなんだろうね、うん。

森:はー。でも(業績の)数字的には絶好調なんじゃないですか。関西支店で端から見てるぶんにはですけど。

M:まあ、それは俺の経営手腕が…ってそんなんないんだけど(笑)。

森:笑。病んでるんですか?人知れず。

M:1年前はね、うちの部署はまだ拠点が点在してたんだよね。まあ、でも難しいねー。メンバーをごそっと本社に異動させてきたけど、人はかんたんに変わらないねー。

森:部署のメンバーが集結してどうなんですか?

M:俺は自分の目標をひとつクリアしたわけよ。僻地の閉ざされた職場でずっと同じお客さんと仕事してきた部署のメンバーを、本社に連れてくる。まあうちの本社も立地としては僻地だけど。

森:いちおう、東京23区内(笑)。もともと本社勤務のメンバーと異動メンバーがいますけど、部内で交流はけっこうあるんですか?

M:(さあて?という顔をしながら)まあ、みんな人に興味ないんだなと思うんだよ、見てて。わかんない。

森:ほう。

M:だから、「なんかおかしいな」って思いだしたのは本社のワンフロアに部署のメンバーが集結してからだよ。「なんかこの部はおかしいんじゃないか?」って思いだして。(業績の)数字はいいから誰も何も言ってこないけど。

森:(業績の)数字見てたら、完全にMさんの一人勝ちって感じですもんね。あ、そんな話すんなよって顔ですね。

M:そうなのかなー。

森:いろいろ実ってきてるんじゃないですか。

M:まあ…少しずつね、少しずつだけど、進歩はしてると思うよ。

森:髪の毛も少しずつ伸びて。

M:髪の毛も伸びて。数字をあげられる人たちが揃ってるっちゃあ揃ってるんだよね。でも「みんな本当に楽しいのかなぁ」とか「うちの部でよかったなぁとか思ってんのかなぁ」って。いや、たとえばね、森さんも知ってるような昔から一緒に仕事してたメンバーとはふつうに話すんだけど、それ以外の人たちはなんかこうほら…

森:殿!みたいな感じなんですか?

M:なんつーのかな、打ち解けないね。だから「俺、裸の王様なんじゃないか」ってときどき思うよね。

森:あれだけ数字を上げてたらそれはないんじゃないですか。

M:いや、なんだろ、その、人間的な部分でね。人間関係のおかしな感じがね、ずーっと違和感があって。俺も本社に来る前は僻地勤務だったんだけど、そこにいたころさ、すごい浮いてたの。

森:言ってはりましたね。部下とはわりと距離が(あった)って。

M:「この人たちとは仲良くできない」と思って、だから本社に来たんだよね。嫌で。で、その当時の印象があるんだと思う。当時からもう話もしなかったし。過去にそういう人間関係ができてる人たちがばーっと部下として再び来て、本社に集結して。

森:「変わったって言ってもね、あの人」みたいな。

M:…。1年越しで変わったことと言えば、自信が少しなくなったってことかな。

森:え?Mさんの(自信が)?

M:もうね、負のオーラにやられてる感じ。去年は「負のオーラなんかもうぶっつぶす!」ぐらいの気持ちでいたけど、負のオーラを払拭できない自分がいて、勢いだけじゃだめだってのを思い知らされることが何度もあって。

森:この1年で。

M:うん。どうしたらいいんだろう?って。若手ばっかだったらがんがん突っ走るけど、うちの部署のメンバーってみんなある程度年齢がいってて、俺より年上の人も少なくないし、負のオーラ社員が多いじゃん。

森:負のオーラ社員(笑)。

M:ワレ関せず社員、ぶら下がり社員、そんな人が多いからさ。俺が言ったことが響かないんだよね、たぶん。「なるほどね!」っていう人と、「何言ってんのばかじゃない?」っていう人と両極端に分かれてほしいんだけど、真ん中の人たちがあまりにも多過ぎるんだよね。

森:「あ、そう」って。

M:「あ、そう。で? 僕は年金もらって生きていきますけど、何か?」みたいな。本社に連れ出してきたけど、みんないい年だからさ、変わらないんだよね。

森:「変わるのもしんどいわー」って。

M:俺の話はいいんだけど、関西はどうなの?楽しい話しよう!

と、いきなりM部長の最近の悩みに体当たりしてはぐらかされてしまったところで、その2へと続きます。
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# by moriko_2011 | 2014-08-18 07:11 | 02_元上司のMさん

【社会人の先輩・松永さん 】【1年目】 仕事やこれまでのキャリアについてざっくばらんに聞いてみる(3/3)

森:「こういう風に働きたいな」って思ったきっかけとかはあるんですか。

マ:こういう風にっていうのは今の(働き方)?

森:刷り込みかもしれないですけど、私からしたら松永さんは、はじめて見た「楽しそうに働いている社会人」なんですよ。

マ:笑。それはね、俺が(自分の好きなものに対して)打算で生きてるからだと思う。

森:ふーん。

マ:行き当たりばったりなの。好きなものはやっぱゆずれないのよね。ある意味社会人に向いてないと思う、本当に。だってふつうで考えたら、放送局からその下請け会社に入るなんてことはありえないわけだよね。

森:ああ、まあそうですね。

マ:そこの局の下請け会社ではなかったにせよ、でも、仕組みとしては下請け会社に転職するわけだから。でもわかったわけだよね、放送局に入って。「あ、ここで働いてても自分のやりたいことはできないぞ」って。

森:うん。(←私の場合はリサーチ不足なだけかもしれませんが、そもそも制作希望で入ったはずの会社がほぼ外注でモノをつくっていて、できてもディレクションぐらいというのはめずらしくないことで、悩ましいところだと思います)

マ:で、給料はたしかによかったんだけど、今はね経営者だからお金が大事って思うけど、当時は「そんなにお金って大事なのかなー」とかって思ってて。今から考えたら高い給料だったし、そんときもね思ってたの。「こりゃもらい過ぎじゃないの?たいした仕事してないのに」って。なんかそれが気に食わなかったのもあんのかな。その辺はもしかしたらスーパーロックKYOIのせいかもしれないんだけど。ロックが好きだったから。

森:どういうことですか(笑)。

マ:お金がいっぱい貯まっていくことにある意味ちょっとこわさもあったのかもね。転職したのって29歳のときで。30代って(それまでとは)なんか違う感じがしてたし、「もしかしたら人生そこで終わりかも、いつ死ぬかわかんない」とか考えてた時期で。で、しかもね、20世紀から21世紀に変わるタイミングだったの。2000年なの、俺が29歳のときって。

森:へー!2000年問題とかがあった2000年。

マ:そう、Y2Kとか言ってたもん。で、なんかそういうのも手伝ったんだろうね。あとはね、キー局の研修とかに行く度に、がっかりすることが多かったの。
当時はBSを開局させる直前で。そのキー局ってさ、何が弱いって全国ネットって言っても6局しかないわけ。「うちは全国ネットですよ」って言っても6局しかない。主要都市でも仙台とか広島とかでかい都市なのにないわけ。静岡もないでしょ、けっこう大きな都市なのにないの。そういうのをたぶんすごくマイナスに、ネガティブに考えてた放送局だから「BSができたらすごいことになる」ってキー局の人たちは思ってたわけ。「うちの局もようやく全国フルネットの時代が来るんだ!」と。

森:めでたく。

マ:そういうふうでさ、当時キー局の若い社員とかと飲みに行ったりすると「地方局なんていらないよねー」って。地方(名古屋)から来てんだよ、俺!(笑)。その俺を目の前に「地方局なんてもういらない時代なんだよね」って(笑)。「衛星から流せばいっぱつで全国に届くわけだから、もうそれでいいんだよ」と。「たしかにな」と思ったよ。「たしかにそうだ」と思った。
本音ではキー局はみんなそうしたいと思ってると思うよ。地方局にネット保証料とか払ってるわけよ、今。ネットワークを組んでもらうためのお金。

森:そんなのいらないじゃんって。

マ:そのお金もいらなくなる。だって(衛星)いっぱつで済むからね。みんな今思ってると思うよ、こんだけデジタルテレビが普及したら。特にテレ朝(笑)。

森:笑。

マ:そういうのも聞いてたから、「ああ、そっか。いつかは(中継局としての地方局は無くなるかもな)、たしかにな」って。で、もうインターネット時代も始まってたし。そう言われりゃ自分のいる名古屋の放送局ってのはほとんどローカル番組もなくて、ローカル番組やっててもむなしいのね。視聴率も低いし。ほとんど東京の番組中継、まあ、中継局だよねほとんど。
それだったら…俺が気になってたのが、そばでやってたFMラジオ局。ローカルで24時間生で放送やってるっていう。東京の番組がいっさい流れないっていう。今は流れてるけど、諸事情で。

森:諸事情で(笑)。

マ:でも、当時は24時間編成だったんだよね。しかも全部、生でね。夜中の3時4時であれ。で、「どんな風にやってんのかな?」って。テレビの感覚からしたらありえないんで、

森:24時間、生放送。

マ:「どんな風にやってんだろう?」ってすごい興味があって、あとはそのスーパーロックKYOI体験だよね(笑)。「音楽専門局って楽しそう!」って。で、そこの番組をつくってる制作会社に転職したの。

森:ふーん。

マ:それは見事、的中して。本当楽しかったね、あの時代。うん。
だって音楽聴くのが仕事だからね、選曲するのが。で、レコード会社さんからはリリース前のCDをいっぱいもらえるわけよ。誰よりも早く聴けるわけね、新作が。で、「これは音楽ファンにとってはたまんない。なんて向いてる仕事に就いたんだろう」って思ったんだけど(笑)。
転職した制作会社はね、わりとね、報道が強いの。というのは、社長が元文化放送の人なんだよね。文化放送ってものすごい骨のある報道を昔からやってて、新聞で言えば東京新聞に近い感覚の放送局。で、そこ出身の人だから、ラジオ局で担当した番組も朝のわりとニュースが多い番組。あと、ジェームス・ヘイブンス(名古屋で有名なDJ)を見いだしたのもその人。東京から連れてきたの、ZIP-FMの開局のときに。

森:へー。

マ:俺ね、いまだに忘れられないのが、面接で社長に「きみ、どんな番組やりたいんだ?」って言われて。インターネットでよくアメリカの(ラジオ)放送聴いてたんだけど、アメリカのFM局でもモーニングショーってトーク番組があるわけよ。メインのDJが二人いて、あとは交通情報の人、天気予報の人、ニュース読む人って5人ぐらいがみんなばーってしゃべってる。ただひたすら世間話をして、「それでは、ニュースお願いします、○○さん」みたいな感じでふってニュース読んで、「交通情報はどうなってんの?」みたいな感じで、それ以外の時間はずーっとしゃべってる。で、「ああいうにぎやかな番組を日本でやりたいです」って言ったら「それはね、InterFMっていう放送局が東京でやってんだよ。もう収集つかないことになってたよ」って(笑)。

森:笑。

マ:InterFMではアメリカのFMに近いベースでやってたんだけど、本当に無駄話で終わっちゃう番組だったんだって。収集つかなくなっちゃってて。(社長が)「あれもやったけど、ちょっと…むしろ…っていうよりさ、名古屋にはジェームス・ヘイブンスっていう人間がいるだろ?」って。「ああ、知ってますよ」って。「彼が交通情報センターにいるっていう設定はどうだ!」とか言われて(笑)。
番組のメインのDJはおもしろくなくていいんだって。ただ、あの番組はなんか交通情報だけは面白いぞ、と。「みんなで交通情報を楽しみにその時間を待ってるっていう、そういう番組はどうだ!」とか(社長に)言われて、「ついていきます!」って。そんなこと考えないもん、当時の俺。

森:交通情報だけおもしろい(笑)。

マ:「情報センターのジェームスです!」って出てきて。「交通情報っていう堅くなきゃいけないところにあの人がいるっていう設定はどうだ?」って。その発想自体、俺できなかったからね、当時。徹底的に叩き込まれたよね、「普通の番組はやるな」と。もう「逆を行け、逆を行け」ってね。「とにかく誰もやってないものをつくれ」って。徹底的に叩き込まれた6年間だった。

森:そこはなんで辞めたんですか?

マ:もう、給料減りそうだったから(笑)。

森:…ふーん。(そんなもん?)

マ:っていうのはウソで、テレビ局を辞めたあともね、そこのテレビ局が人が足りないって言ってね、バイトで仕事やってたの。転職した制作会社には内緒で。で、ローカルの生番組とかよくやってたのね。

森:へー(笑)。

マ:ひとつはそれがきっかけで。あるとき…「どまつり」(にっぽんど真ん中祭り)ってあるでしょ?

森:うん、愛知で。

マ:あれのテレビの生中継の現場ディレクターをやってたの。そしたら現場のPAをやってる人たちが実は、担当してるラジオ局のミキサーさんチームだったわけ。

森:笑。いろいろまずい。

マ:で、バレて、「あれ何やってるんですか、松永さん!」とか言われて。「いや、あの、ちょっと言われたからやってんだけど(笑)」みたいな。

森:(業界せまいから)もっと早くばれそうやのに。

マ:あと、テレビのバイトの給料があがってきちゃったのね、やりすぎて(笑)。こりゃまずいなってぐらいの金額になってきちゃった。最初はね、数万円だったんだけど。最後のほうはもうほぼ(制作会社の)給料に匹敵するぐらいまでやっちゃったからね、言われるがままに。
で、「ああ、やっぱりテレビもおもしろいよな」って思ったし。「こりゃちょっとまずいよな」と思ってたけど、最終的にバレたってのがきっかけのひとつ。

森:バレた(笑)。

マ:もうひとつはね、他のラジオ局でしゃべらせてもらう機会があったんだよね。当時、他のラジオ局のプロデューサーの人がね、兼アナウンサーなんだけど、

森:プロデューサー兼アナウンサー!

マ:ラジオってそんなもんだよ。

森:へー。

マ:その人が、4月から始める土曜日のワイド番組で、音楽コーナーを考えてたんだけど、コメンテーターの人が急遽「出られない」と言ってきたと。2週間前だよ、番組始まる。

森:笑。

マ:「松永さん、こういうコンセプトでできない?」と。「世界中の変な音楽を紹介するっていうコーナーをやってもらえないか」と言われて。「そりゃやりたいんだけど、普段別のラジオ局で仕事やってるから、どうかなぁ…」っていう(笑)。その人とは旧知のなかだよ。同じ大阪の豊中出身の人で、テレビ局時代から知ってた飲み仲間だったから。「俺もぜひやりたいんだけど、ただ周りがどう言うかってのはあるんで、ちょっと一回聞いてみるわ」って。で、担当してるラジオ局に相談したら、やっぱNG出たよね。「ライバル局にお前が」って。当時から俺、放送にも出ちゃってたからね、ADで。

森:出てましたね(笑)。

マ:「ダメ」って言われて。いちおう自分の制作会社の社長にも報告したの。「本当は俺としてはやりたいなって思うんですけど、こうこうこういう経緯があって、ちょっと(担当してるラジオ局の)あの人に怒られちゃったんで、そのことだけ報告しておきます」って。社長は「はあ?何言ってんだ!あいつ」って(笑)。

森:笑。

マ:「だからラジオがダメになっちゃうんだよ!」って言ってくれたの。

森:へー!

マ:で、その人を説き伏せたんだろうね。裏で何があったのか知らないけど、OKが出たの。担当してるラジオ局の(NGを出した)その人から。

森:いや、社長かっこいいですね。

マ:(社長に報告した)3日後ぐらいに「松永さん、ちょっといい?あれね、うちOK出たんで」って(笑)。「えー!」ってなって。

森:すごーい!

マ:でもそんときにね、ちょっと思ったんだ。「ああ、こりゃもうラジオの心の崩壊がはじまってるな」って。たしかにね、うちの社長の言うとおりで。「そういうことに文句を言うとかクレームをつけるとかいう問題じゃないだろ!」って。ラジオ全体でもう考えないと。

森:そもそも。

マ:もう当時からリスナー減ってたからね。「(他局の放送に出る出ないのの)こういうやりとりもイヤな感じだな」って。で、バレたのもあったし、いちおう俺を応援してくれたその制作会社とは、契約という形に切り替えて会社をつくったの。「テレビもラジオも両方しますよ」と。「これでようやくちゃんと公にできますよね」と(笑)。「両方やります」って言ったんだけど、ラジオはもうなくなっちゃった(笑)。

森:笑。

マ:だから、自分が会社つくるなんて思ってなかったよ。

森:でも、聞いてるとサクセスストーリーやなと思います。

マ:いやいや、サクセスかどうかわかんないよ。今、成功してるかどうかなんてわかんないからね。

森:うーん。

マ:このあと、破産宣告されるかもしれない(笑)。

森:笑。いや、でもそんだけ売れっ子ってことですからね、個人で。

マ:…すごく恵まれてたのはあると思う。たぶんいろんな人から「やって」って、「お前手伝えないの?」とかって言われて、ほいほい行ってた自分が(笑)。普通だったら行かないんだろうね。

森:「仕事でこういうところは大事にしよう」っていうのはあったりするんですか。いっかんして。

マ:「こういうのはやらない」ってのはあるよね。

森:ふーん!

マ:福島の事故の前の話だけど、原発がらみの番組は二回目以降はやらなかった。あと、むちゃくちゃ金額がよかったやつ。これはね、100万円を提示されて3分間ただ山とか川とかを撮ってくれっていう仕事があって(笑)。

森:そんな仕事があるんですか!笑

マ:「むちゃくちゃおいしいじゃん!」って。だってそんなん1日でできちゃう仕事なのに。3分間の映像。よくよく聞いたら、某新興宗教がスポンサーになる天気予報のバックで流れる映像。これはもう実態を知ったら「やっぱごめんなさい、それはちょっとない」って。いくらお金に困ってても、自分の信条にかぶらないとね。

森:逆にそこぐらいなんですか。

マ:かなぁ…

森:こだわりポイントというか。

マ:いや、これはやらないって意味ではもっといっぱいあるよ。あぶないものはやらないし、当然アダルトビデオもやらないし、そういうのはやらないけど。
俺、本当に飽きっぽいからいつも5年周期でやりたいことが変わるんだけど(笑)、

森:笑。うん…

マ:今の会社もようやく5年目に入って、今まだひきつづきやってられるのは、企業もののVP(Video Package)をやるようになったから。昔は「企業VPってどうなの?そういうのとか?」って思ってたんだけど、今は逆にそれがすごいおもしろくって。
まあ、お金も当然入ってくるからありがたいっていうのもあるんだけど、それ以上に、放送局のディレクターとして番組をつくってると、いつも常に第三者。ところが企業VPってもっと中に深く入っていくでしょう?機密事項もけっこう扱うのよ。それこそ大きな会社の社長さんの社内向けの新年あいさつとかさ(笑)。「ああ、そうだったんだ」とかいろいろ知るのよ。放送局の記者よりも絶対知る…んだね、取材先の本当の姿を。

森:うん、意図とか理念とか、

マ:とか、あるいは(会社の)状況だとか。「えー意外とみんな知らないんじゃない、こんなこと」って。「これだめよ、言っちゃ」って言われてるから言わないけど。だけど「そっか」と思って。一時期、ラジオやってたときに「お金が大事」と思った時期があって。自分の給料が減っていくって場面に直面したから。で、本気でなんでもない会社とかに転職しようとか思ってたの。メーカーとかに。

森:へー!意外!

マ:30いくつぐらいかな? 登録したことがあるのよ、(転職サイトとか)そういうところに。だけど、やっぱりしっくりこなかったのね。
自分のなかで今になってようやくわかったんだけど、企業VPをつくってて「この会社に入りたいな、ここだったら働きたい!」って思う会社が本当に少ないの。で、「今、自分はすごいめぐまれた仕事をしてるな」と思って。関係ないのに関係してるっていう変な関係じゃん。別にそこの業績に貢献もしないんだけど、そこの会社の奥深くのとこまでは知っちゃってるぞと。

森:うん。

マ:向こうもこちらを信頼してるからそこに入らせてくれるわけだよね。そういうほうが、たぶん放送局でジャーナリストをやるよりも真実がわかるというか、「そうか、この会社はこういう風に儲けてるんだよね」とか、あるいはそこで働いている人たちの気持ちとかもたまに出てきたりとか。
そういうのがすごいおもしろくなってきたってのはある。自分のポジションがより明確になってきた感じはすごいする。「俺は今こういうことをやんなきゃいけない」とか。

森:私がデザイナーをやりたいなって思ったのは、自分の知らない世界を知れるから。なので近いのかも。しかも、お客さんの情報発信の手伝いをするわけだから、ものごとの本質を見る、知れる。と、まだまだお話は続きそうですが、そろそろ時間なので今年のインタビューはこの辺で。

マ:はい。

森:お付き合いいただき、ありがとうございました。


インタビューのなかの松永少年や松永青年は、同級生にもいそうな「それなりに《俺の世界》がある男子」でした(笑)。社会人として尊敬する相手の、考え方や働き方に影響を与えた人・モノの話を聞くのは、なかなか楽しい時間でした。ありがとうございました!
(ご本人は普段取材する側だからか、記事を読んでつまんない話だなという感想でしたが、私は今まで断片的に聞いていた話がつながっておもしろかったです)

インタビューのはずが途中なぜか私の人生・制作活動相談も要所要所でけっこうな時間挿まれ、それに対してあいかわらず、結論としては「自分がおもしろいと思うものをつくったらいいよ」とスパッと言ってくれる存在は、まだまだ迷い続けるアラサーにとって、やはりありがたいものです。

さあ、飽きっぽい松永さんは企業VPにも飽き始めて次に行きそうな気もしますが、どうなっていくのでしょう。諸事情により2013年のインタビューは実施していませんが(申し訳ありません…)、ひきつづきよろしくお願いします!

《おまけの追記》
記事を書きながら、このインタビューをした2年前とは私自身もけっこう変わったなと思います。松永さんの制作者としてのとんとんなサクセスストーリーを、当時27歳の私はどこか嫉妬まじりに聞いていましたし(そして「おお、やっぱり彼も業界の人なのだな」と思った)、社会人として尊敬する彼と自分との共通点をどうにか見つけようと必死だったもようです。「知ることが好き」「飽きっぽい」「ゆるいけど打算的(←松永さんに大変失礼発言!)」以外は、共通点があまりないという事実を30歳直前の今はすんなりと受け入れられます。実際、今の私のキャリアからすると、仕事の話で身をもって共感できるのは最後の企業VPのくだりぐらいです(笑)。

世間知らずな小娘は「私が見えていないものも見ていて、考えられないことを考えられて、おもしろいものを自然とつくり続けられる強い&すごい人」という勝手な憧れを長らく松永さんに抱いていましたが、自分が社会に出て7年目ともなると、もちろん彼の能力の高さもあるけれど、それは経験に裏打ちされた部分も多く、悩みや葛藤がそれなりにある、という当たり前の事実もだんだんと見えてくるようになりました。時間が経つにつれ、妄想のような勝手な憧れが現実味を帯びた尊敬に変わってきたのは、よいことなのだと思います。
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# by moriko_2011 | 2014-07-22 00:42 | 08_社会人の先輩・松永さん

【社会人の先輩・松永さん 】【1年目】 仕事やこれまでのキャリアについてざっくばらんに聞いてみる(2/3)

森:最初に「松永さんのお父さんってお仕事何してはったんですか」って聞いたのは、最初にふれる社会人って親かなと思って。

マ:うちの親はある意味特殊な人だよね。(航空管制官として)24時間体制で働いてて、当時は一番短いシフトだと4時間しか働かない。だからほとんど家にいる人なんだよね。

森:父親の仕事ぶりってそれによって「仕事ってこういうものなんや」って印象がつくというか、私自身はついたんですね。それはないですか。

マ:俺はあんまりなかったね。(父親の仕事は)もうまったく別世界。
俺、男3人兄弟なの。父親は自分自身はパイロットになりたかったけど、背が低くてなれなかったのね。今は引退してセスナは乗ってるけど(笑)。だから(息子のうちの)誰かはパイロットになってほしかったの。
ところが誰も(パイロットには)ならなかった。それ用の教育もしてたのよ。俺なんか長男だから「目は絶対、視力を落としちゃだめだ!寝る前に必ず遠くを見なさい」って。それがよかったけどね。今も目がいいし、いまだにコンタクトだとかメガネを使わずに済んでるから。

森:目がいいの、うらやましい。

マ:それとね、あと「英語を勉強しなさい」。で、俺、小6のときに短波ラジオって海外の放送が聴けるラジオを与えられたのね。ラジカセね。

森:へー。英語の勉強用にですか。

マ:そう、「英語を勉強しなさい。FENを聴きなさい」って。FENって81.0で東京でやってるけど。あ、今AFN(American Forces Network)か。当時は短波でも聴けたんだよね、全国で。で、それをよく聴いてて。テニス部だったんだけど、雨だったり冬だったりで土曜日の部活が早く終わると、家帰ってラジオ聴くのが楽しくてしょうがなくて。「アメリカンTOP40」っていう番組を土曜日の午後ずっと、4時間やってたわけよ。英語じゃなくて俺、音楽に行っちゃったんだよね、(英語の勉強用に)与えられたラジオで(笑)。

森:あれ?って(笑)。

マ:「あ、こんな楽しい世界があるんだ」って思って。だからずーっと音楽が好きで。名古屋のテレビ局に就職したんだけど、そこをあきらめられなくてラジオのFM局の制作会社に転職したの。
今、前いたテレビ局の野球中継の副音声で、野球とは全然関係なく2時間ひたすら音楽を流すってのをやってて。「ビートルズナイト」とかテーマを決めて。その選曲の仕事をやってるんだけど、そんなのも仕事になっちゃってるから、あのとき親父からもらったラジカセは非常に投資価値のある1台だった(笑)。

森:投資価値(笑)。

マ:(ラジオを聴き始めた)当時ね、すばらしいアメリカ人の投資家がいて。
日本の放送局が少な過ぎるって嘆いて、サイパン島から短波放送で24時間ロックを流し続ける放送をはじめるっていう、バカなすばらしい投資家(笑)。KYOI(キョイ 参考:http://www.ne.jp/asahi/kyoi/radio/)っていうコールサインで、日本の代理店もついて、コマーシャルは英語と日本語のやつが流れたのね。時報CMは日本のセイコー。基本英語の放送なのに、CMだけ日本語だったりするのよ、たまに。コカコーラとか。
「すごい斬新な放送局だなぁ」と思ってよく聴いてたのね。24時間ロック流すだけの放送局だよ、しゃべりもほぼなしで。なんかね、トリのキャラクターがあって、手紙を出すとそれのステッカーとか送ってくれたよ。名前もわかんないんだけど。家にあるよ、実家帰ったら。24時間ロック流すだけって日本のラジオ放送とは概念がまったく違う。

森:KYOI(キョイ)って何のことですか?

マ:コールサイン。無線局を識別するための符号で、電波を出している放送局には必ずそういうコールサインがあるの。日本で言うと、たとえばフジテレビはJOCX、大阪だと毎日放送はJOOR。昔は言ってたのね、「こちらは毎日放送です、JOOR」とか。

森:あの、一日の放送が終わるときとかに言ってはるやつ。

マ:そう。アメリカ、太平洋地区の場合はKではじまるの。

森:(KYOIの参考サイトを見ながら)「どうして廃局した」

マ:それたぶんWikipediaとかに載ってると思うんだけど、初日の放送で、セイコーの時報CMがずれてたんだよ、時間が(笑)。そういう放送事故、大事故が起きて。

森:ああ、書いてあります。「キョイは民放のラジオです。当然CMを流して収入を得ていました。しかし、時報装置の故障によって、開局した1982年末から時報が狂って送信してしまい、それに怒った服部セイコーが CMをうち切ってしまい、よって他のメーカーSONYなども下りて、ついには収入が全く無くなってしまいました。」笑。

マ:そうそう(笑)。そうなんだよ。

森:え、じゃあけっこう短命だったんですか。

マ:短命だったと思うよ、最終的にはニュース専門局になってたもん。

森:「1986年ころからは廃局してしまうので寄付して欲しいというアナウンスも流れましたが、」

マ:ああ、言ってた言ってた!「1000円封筒で送ってくれ」って言ってて。で、1000円送るとTシャツ送ってくれるの。

森:え?それ…(ほぼ寄付にならなくない?)

マ:当時としては販売だなぐらいに思ってたんだけど、それ寄付だったんだよね。

森:「思ったように好転しないまま、1988年あたり、一時「クリスチャンサイエンスモニター」という」

マ:そうそうそう。

森:「宗教放送に吸収され、」

マ:笑。クリスチャンってついてるけど別に宗教放送じゃないよ(笑)。アメリカで有名な新聞なんだよ、「クリスチャンサイエンスモニター」って。

森:へー。「「オールヒッツKYOI」と改めて、オールディーズも含めて時間限定で放送されていましたが、ついに1989年あたりに洋楽放送をうち切って、事実上キョイの廃局ということになりました。」

マ:そうそう、廃局しちゃったんだよね。幻の放送局だよね。当時TOP10っていう番組が日本にあったけど、ここは当時からTOP100。6時間かけて100曲流すっていう(笑)。当時中学生だった俺にとっては「すごい、なんて斬新な放送局だろう!」って。

森:衝撃のスーパーロックKYOI。

マ:いまでこそFMはZIP-FMとかあるけど、当時はFM愛知しかないでしょ、こっち(愛知)には。FM愛知は当時は、まあAMの音がいいやつぐらいの感じだったから。

森:へー。

マ:KYOIはノンストップでずっと音楽を流してて。ただ、周波数が時間によって変わるのね。短波放送の技術的な問題だと思うんだけど。高校野球みたいに「この後は何チャンネルでお届けします」みたいなアナウンスが入るのよ。

森:で、チャンネルを合わせて。

マ:そうそう、で、合わせるとまたきれいに音が入るっていう。番組はね、LAでつくってるのね。俺もサイパンって行ったことないけど、サイパンって意外と日本に近いじゃんね。そこに目をつけたその投資家ってのはなかなかのもんだなって。だから時報装置さえちゃんとしてれば、意外とうまくいってた可能性が(笑)。
KYOIの服部セイコーのCMは俺も覚えてるんだよね。ちょうど試験放送をやってたときにもらったんだよね短波ラジオを。すごく強力に入る電波だったの。すごい、もう地元の放送みたいにきれいに入るから、

森:聴いてみようって。

マ:で、雑誌とか見てもその名前ないの。まだ開局してないからね。
KYOIっていうのは本当に個人がつくった放送局だからか、あんまり日本の雑誌とかにも取り上げられてなかったけど、「すごい、なんてかっこいい放送局があるんだ!」って。今のZIP-FMのスタイルそのままなんだよね。あれのしゃべりが少ないバージョン。ずーっと音楽流してる。ひたすら。

森:そういうのって、昔はなかったんですね。

マ:うん、なかったなかった。日本であの手の放送局ができたのは、FMヨコハマが最初じゃないかな、1985年。それまでは、まあFENはあったけど、あそこもわりとしゃべりは多いからねえ。本当に音楽ばっかっていうのは、FMヨコハマが開局して、しばらく経ってJ-WAVEが開局して、じゃない?
名古屋も本当は免許がなかったの。当時のFM愛知はものすごく力のある放送局で、政治的に。絶対ライバル局は開局させないっていう方針だったんだけど、デザイン博(世界デザイン博覧会:名古屋市の市制100周年記念事業として1989年7月~11月開催)ってのがあってさ。そのときにCBCが臨時でイベントFMを開局させたの。当時のCBCの担当者がすごいおしゃれだったんだろうね。NYのFM局をそのままこっちに持ってこようって考えて、NYのFM局からBGMを入れるっていうスタイルで放送をやったのね。で、それがあまりに好評でFM愛知(の聴取率)を抜いちゃったの。イベントの放送局がだよ。

森:一時的な放送局やのに。

マ:だから閉局するときに、みんなが辞めるなってCBCにすごい電話したり投函したりしてて、それをまあCBCも報告したんだろうね、当時の郵政省に。「できればもうちょっとやりたいんですけど」的なことを言ったんじゃない? 営業的にも成り立ってたと思う。数字取れてるし。だけど、今はOKなんだけど、当時の日本の法律では放送局はひとつの電波しか持てなかったから。だからたぶん「ZIP-FMっていうのに新たに免許を与えましょう」って。CBCの、当時そのイベント局はFM DEPOって言ってたんだけど、そのスタッフも何人かZIP-FMの社員として入ってたもん。

森:ふーん。

マ:デザイン博って高校時代で、同級生とかも「あれ(FM DEPO)はかっこいい」とか言ってたよ。

森:松永さんは高校時代とかからそういう(ラジオ関係の)お仕事を考えてはったんですか。

マ:いや、考えてなかった。
当時、FMヨコハマのヘリコプターが墜落する事故があったの。当時はやっぱバブルだよね、1時間の番組なんだけど、「ヘリコプターからDJやってます」っていう体の番組で。

森:バブリーな!

マ:そう、バブリー。いろんなところを飛び回るから、当然、生中継なんて技術的にできない。でもそれはFMヨコハマにとってはかっこ悪い。たとえば「今、鎌倉上空を飛んでます」って言ってるのに、鎌倉でラジオを聴いてて「飛んでないじゃん」って思われるのがすごい嫌だったんだね。で、放送に合わせてFMヨコハマって書いたヘリコプターを飛ばしてたわけ。

森:わざわざ。へー。

マ:それが墜落する事故があって。で、二人亡くなったわけよ。そのとき新聞にFM業界の大変さみたいなのがばーっと出て、それを見たときに「ああ、すっごい安い賃金で働いてるな」とかいうのを知って「こういうとこ行っちゃいけないな!」って思ってた(笑)。

森:えっ…(笑)

マ:自分は(ラジオが)好きだからそういうところに行きたかったけど(笑)、そこの記事を読んで「ああ、こんな安い給料じゃできない…」って。当時、俺、名古屋空港でバイトしてたんだよね。高校生だけど、ちょっと働けば十数万円とか稼げてた。

森:え!どんだけバイトしてたんですか!

マ:そうとうやってたよ(笑)。

森:高校生で十数万稼ぐとか、ちょっと…(学業とかは大丈夫なのかしら)

マ:あ、夏休みとかだよ。航空博物館的な見学施設があって。そこのバイトをやってて。基本的にはチケットもぎり。暇でしょうがない仕事。友達に紹介されて行って。そういう風だったからさ、「(高校生のバイトの)俺とあんま給料変わんないじゃん、こりゃだめだ」と思って。

森:笑。

マ:で、当時、天安門事件ってのが起きて。1989年、高3のときだったんだけどね。それのね、NHK特集がすごいよかったんだよね。アメリカのソールズベリーっていうAP通信の記者がたまたま、NHK特集の別の企画で北京に取材に行ってたの。
で、そのときに事件が起きちゃったの。ソールズベリーさんっていう人は中国の政府寄りの人で、NHKにとっても都合のいい人だったわけだよね、今から考えると。で、中国政府からも信頼されてる人だったからいろいろ内部まで取材できる人だったの。
ところがその事件が起きて、「これは政府が間違ってるよ」っていう風な番組になったわけだよね。で、けっきょくNHKで6時間の長編ドキュメンタリーになって。

森:へー。

マ:もうおじいちゃんなんだよ、ソールズベリーさんはその当時80何歳とかで。もう今は亡くなっちゃったけど。「すごい、こんなかっこいい仕事があるんだなー」と思って、「ああ、新聞記者とかいいなー」って。憧れだよね。で、大学行ったら、たまたま友達が新聞社で働いてるっていうから、バイトで行って。整理部でバイトしてて、ところがね、あそこはね、訃報がいっぱい貼ってあるわけよ、社内の(笑)。

森:社内の!笑

マ:みんな短命なんだよね、意外と(笑)。

森:それは記者の人?

マ:ではなくて、記者の人も含めていろんな職種の人。複数貼られているわけよ。「そんなに亡くなるんだ」って。

森:ハードワーク?

マ:俺から見ててもハードワークだなとは思ってたわけよ。
バイトの場合は時間が決まってるから。だいたい俺は夕方職場に行って、当時はメールとか無いからさ、自転車で市内の各記者クラブをまわって原稿とフィルムを回収して、戻ったら18時ぐらいで。社食でカレーライスを食べて19時ぐらいに職場に戻って、そっから朝刊の一番早いのが終了する時間までっていう契約で。終わりの時間は決まってないの。まあ、だいたい24時過ぎ。で、整理部に俺のゼミの先輩がいたんだよね、今でも交流があるんだけど。当時いろいろ飲みに連れて行ってくれたりして、話を聞いたりいろいろ知るうちに「大変だな、この仕事。俺には無理だ」って思って。

森:笑。

マ:だってさ、親がさ、4時間しか働かないような日がある人だよ。24時間勤務だから残業っていう概念がないわけね、うちの親父なんかは。だから俺は「そんな長い時間働くの?そりゃ大変だ」って。今から考えたら本当なめた考え方だけど(笑)。で、けっきょく新聞社は受けずに「テレビ局のほうが楽しそうじゃん。わりと似てるし」って思ってテレビ局に行ったんだけど、「テレビのほうもこれ大変だぞ」って。

森:笑。

マ:バイトの感覚だからさ(笑)。最初スポーツ部に配属されたんだけど、仕事はそれなりにおもしろくて。いろんな人に会えるしね。「やっぱりこういう仕事ってのはおもしろいな」って。ところが、総務部に異動になっちゃったわけよ、突然。スポーツに配属されてから2年後。これは本当に誰もが予想だにしなかったんだけど。あとで知ったんだけど、総務部が目をつけて内定してた学生が来なくなっちゃったの。辞退されちゃったの。だけど総務部としては人が、

森:ほしい。

マ:当時ね、総務ってけっこう会社の基幹部門だから親会社が支配してたの。実はプロパーの社員がひとりもいなかったの。俺がはじめてだったわけよ、プロパーの社員。
ようやくプロパーの社員を育てようっていう機運になってたんだよね。「開局して何年も経って、そろそろ親会社も撤退する。親会社の影響をなるべく少なくして、ポジションを(プロパーの)社員に与えよう」みたいな感じになってたらしいの。で、そこに割り当てられていた内定者が辞退しちゃったもんだから、

森:じゃあどうするって。

マ:親会社に説明がつかないわけ。親会社はもう(人が戻る)人事が出ちゃってるからね。総務の人事に穴が空いちゃうからって、穴埋めするのが俺になっちゃったの。
電撃移籍的な感じだったわけよ。だってスポーツ部長も知らなかったもん。

森:へー!

マ:びっくりだよね。総務部って当時は「聖域」みたいなところがあったから。自分が行くなんて思ってもいなかったし。
異動の希望調査とかはいつもあって、俺としては「スポーツ部よりは事業部のほうがおもしろいな」と思ってて。当時は、事業が、イベントがものすごく元気のある放送局だったから、音楽が好きだったし「コンサートとかやりたいな」ってずっと思ってて。内定のときからそういう希望も出してたの。だけど、(異動になったのは)スタッフで総務でしょう。総務って何してるとこなのかもよくわかんないし、当時。「なんかこわいとこ」(笑)。

森:こわいとこ(笑)。でも、会社にとっては重要な。

マ:いや、後から知ったんだよね。そんときはわかんないから。「なんかこわいとこ」ってずーっと思ってて。「人の人生決めるとこ」、ぐらいに思ってたから。そのテレビ局の総務は経理以外の業務全部なんだよ。人事だったり秘書だったり全部なんだよね、人数少ないから。
今んなったら助かったよね、会社つくるってなったら。

森:助かりそうですね、それは。

マ:意外なところで役立つ。あのときは全然わかんなかったもん。「なんで俺、総務なんだろう」って。「こんだけモノつくりたいって言ってるのに」って。

まさかの総務部への電撃移籍、とてもサラリーマンっぽい話!と思ったところで、その3へとつづきます。
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# by moriko_2011 | 2014-07-22 00:29 | 08_社会人の先輩・松永さん

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